top of page

​炬火 Die Fackel 

 拙書『防衛医大…』https://amzn.asia/d/iyi83a4に関連する話題が出ていることである。

 被告側の医師が、その弁解のなかで、自分は日本で唯一、それに関する論文を発表しているから、他の医師が知らないことを知っているという奇妙な自画自賛した。その論文の中身こそが問題になるが、それ以前の問題として、その医師はこの件について法廷で積極的ではなかった。病院の側に立つ弁護士が積極的に言っていただけで、それを法廷で言われても医師は口を濁していた。

 実は、その医師は論文を書いていなかったのだ。


 その医師は同じ医大の他の医師が書いた論文に連名していただけだった。

 そして、実際に書いた医師は、そのあと出世して、他のもっと格が上の医学部の教授となっていた。一方、被告の医師は格下の医大の講師止まりであった。

 それなのに「日本一」と弁護士から法廷で言われたのだから、医師としては口を濁して当たり前である。

 もともと理科系では、研究に直接の関与がない者まで論文に連名することが普通にある。これを、弁護士は文系なので知らなかったのだろうと言う人がいた。この人は大学院で理系であった。


ree

 しかし関与してないのに連名するのは弁護士もやることだ。

 これは複数の弁護士が属している法律事務所が、よくやっている。実際には弁護士が一人で当たっているのに、同じ法律事務所の弁護士たちが訴状で連名する。要するにコケ脅しである。古くて手垢まみれの手法だから、今時やるとしたら相手が弁護士を雇っていない場合である。

 このようなコケ脅しを研究論文では用いないと思っているのだろうか。そこまで無知なのだろうか。いくら文系でも御粗末すぎる。


 もちろん弁護士には目論見があった。

 その中身を差し置いて、論文を発表したから「日本一」であると強弁し、だから間違いがないと滑稽なほど言い張り通した。他の専門医の鑑定や意見は無用だと必死で抵抗した。これで通用すると本気で思っていたかどうかは不明だが、こうするしか他に方法が思いつかなかったようだった。

 それでも「政治的配慮」を裁判所に求めてのことなら、あり得るやり方である。特に自衛隊関係の場合は。


 ここで深刻なのは医師の医学界での立場と面子である。

 なぜなら裁判とは別に、医師が恥を曝してしまうので。これは実際に、その医師が他の医師たちから言われていた。その医師の年齢やキャリアからして「日本一」なんてあり得ないし、仮に高い評価を受けている人でも「日本一」だから間違わないなんて、とんでもないこと。しかも連名した論文を持ち出しコケ脅しに利用するなんて、裁判官も文系だから騙せたとしても医学界では笑い者である。

 つまり弁護士は、訴訟の戦術しか考えておらず、その影響で自分の依頼者の側に居る者らがどうなろうと知ったことではないのだ。これは弁護士全般に言えることである。

 だから弁護士に依頼する場合、これも考慮しなければならない。むしろ料金のことより重要だ。

 

 

 
 
 

更新日:9月19日

 元裁判官の瀬木比呂志さんと岡口基一さんが、それぞれ著書で述べていた。

 司法記者が司法に無知なので、裁判の判決文を読んでも意味が解らず、それで裁判所から「判決要旨」をもらって記事を書いているのが現状である。

 こんなふうに教えてもらってばかりいるから、報道が司法に対しての監査とはならない。司法記者なら法的な勉強をして理解力を付ければいいはずだが、それを楽をするため新聞社と裁判所が癒着する。

 これでは司法に何か問題があっても批判できるわけない。


ree

 前に立川の裁判所で裁判官から言われたことがある。

 これは自分が提起した民事訴訟でのこと。敗訴した相手方がblogで愚痴っていたさい、その判決への批判が無茶苦茶な内容だったから、この裁判を傍聴に来た第三者がコメント欄に、あんたの判決批判は間違いだぞと指摘する投稿をしていた。そういうことがあった。 

 これを後に別件のさい裁判所で言った。関連があることだったからだ。すると裁判官に言われたのだ。当時者とはいえ素人だから間違いがあっても当たり前なくらいだよ、と。


 新聞記事でも、判決の報道で無知に基づく間違いを書いていることがある。

 その女性の裁判官は言っていた。判例時報でさえ読んで首を傾げることがあるくらいだから、素人の記者が書いている記事なんか毎度のように無茶苦茶なものだ。

 そう言われても仕方ない現状だけれど、それで新聞社として強い司法記者を養成したり、司法記者が強くなろうと鍛えたり、ということはない。楽をしたがっているだけでなく、新聞社が役所と癒着して、そこからはみ出したりする者は排除するという、よくある図式が出来ているのだろう。


 そうなると報道が裁判所から操作されることになる。

 これに異を唱えると、ほんらいは監査する立場である報道が、裁判所の側に立って異を唱える市民を迫害することになる。

 ここで、一般市民の多くが、お役所のしていることは正しいという思い込みに基いて、間違っている報道を鵜呑みにしてしまう。これを上記の元裁判官たちが指摘していた。そして、一般市民もお役所は正しいという思い込みを棄てることが大事であると指摘していた。


 あと、判例時報でも専門家が首を傾げることがあるという点だが、前に新米のしょうもない某弁護士が、まさに若気の至りで、判例時報に解説を書いたと自慢していたので、こいつでも書けるのだから、これじゃ裁判官から首を傾げることがあると言われて当然のことだと納得したことがある。

 みんな「権威ある」ものは疑いましょう。こんなに御粗末なのだから。

 
 
 
  • 執筆者の写真: 井上靜
    井上靜
  • 9月16日
  • 読了時間: 3分

 米が足りなくなって麵類を食べる機会が増えた。

 それで思い出すのは、スパゲッティの食べ方だ。イタリア人が不可解だと言うのは、スパゲッティを食べる時に日本人はタバスコをかけること。日本では、ざる蕎麦にワサビ、うどんに七味唐辛子、ラーメンに胡椒、というように麵類に香辛料を付けるので、その感覚でスパゲッティにタバスコを付けるのだろう。

 あと、食べる時にスプーンを使うか。イタリアではスプーンを使わないのか。フォークに巻きつけてスプーンを添えるのは、本来の食べ方ではないという話を、よく聞く。あれは和式の食べ方だ、と。

 もちろん、それで食べ易すければ良いのだ。


 ただ『ゴッドファーザーpart2』で、スプーンを使っている場面があった。

 それは回想の場面でのこと。ビトコルレオーネの最初の相棒であるクレメンサが、ビトとサルバトーレと一緒に食事の時、スパゲッティをフォークに巻きつけるさいスプーンを添えて、挟むようにして口へ持っていっている。

 そんなのはイタリア人の食べ方ではないということなら、監督が注意するはずだ。フランシスコッポラ監督はイタリア系で、そのあと『地獄の黙示録』の東南アジアロケに、いつもパスタを空輸させて食べていたほどだから。

 ということで、スパゲッティを食べるさいスプーンを使ってもいい。


ree

 『ゴッドファーザー』といえば女性に人気がある。

 映画が好きな女性と話をすると、だいたい『ゴッドファーザー』を観ていて、好きな作品だと言う。ヤクザ映画なのに。

 これは、アメリカのギャング映画と違ってイタリア系のマフィアの話だから、だろう。アメリカのギャングは企業みたいに組織化された犯罪集団だからビジネスライクだけど、イタリアは家族や血縁を重んじ家父長的な文化が強いので犯罪組織も家族として結束をしている。その中で、女性のことが「極道の妻」の悲哀として描かれている。

 最後の場面でマイケルに妹のコニーが泣きながら食ってかかり「裏切り者でも私の夫よ、殺すことないでしょう」、これに居合わせたマイケル妻のケイが「ほんとうなの」と訊くとマイケルは「仕事の話に口を出すな」と言う。そして側近がドアを閉じてしまう。あのラストは可哀想だったと、多くの女性は言う。part2ではマイケルがドアを冷たく閉じる。

 part2で、妹は兄を許すと言う。跡を継いだのだから父親のように強くならないといけなかったと理解して。それは家族のためで、かつて父ビトは庶民を食い物にする顔役に怒りの銃弾を打ち込んだ。この顔役が憎たらしいので観客は溜飲が下がるけれど、やむにやまれぬ事情があったからのことだった。だから凄惨な殺戮の直後にビトが家族のところへ帰り、赤ん坊を抱いて「マイケルよ、お父さんはお前を愛しているぞ、ほんとうに愛しているからな」と小さい手をとって言うと観客は涙ぐんでしまう。

 しかしケイは夫の家業を嫌悪し、子供を連れて出て行くという。子供は渡さないと言ってマイケルは妻だけ叩き出してしまう。コッソリ子供に会いに来たケイは、コニーから「もう行って。マイケルが帰ってくる」と言うけど、ケイは未練たっぶりで、玄関を出ても息子にお別れのキスをするように言うが、息子が躊躇っているところでマイケルが来てドアを冷酷に閉める。その向こう側からすすり泣きが聞こえる。

 こうした、夫は家族のために戦っているけれど、それに妻が理解をしないだろうから口出しさせないとかいうのは、なにもマフィアに限らずよくあることだ。そこで生じる悲哀のドラマを女性は喜んでいるわけだ。


 というわけで米不足だけどスパゲッティを食べているから平気な者としては、その食べ方から『ゴッドファーザー』を思い出してしまったのだった。

 

 
 
 
  • twitter

©2020 by 井上靜。Wix.com で作成されました。

bottom of page