- 井上靜

- 11月10日
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紳士服の専門店で店員と話した。
スーツは売れなくなってきた。倒産した有名な専門店も何軒かある。日本は運営しているがブルックスブラザーズやバーニーズニューヨーク、バーグドルフ・グッドマンやニーマン・マーカスという店が。
これは、アメリカでは仕事で着なくてもよくなったからだが、日本は暑いからだ。世界的な温暖化だけど特に日本は著しい。もう年の半分以上が着ると辛い。それでネクタイも売れない。アメリカでは、高級紳士服を販売するようなお店やブランドがどんどん倒産しています。
やはり気候が変わっているのだろう。熊も冬眠しなくて人里に出てきて騒動になるのではないか。そんな話になった。

今、仕事で背広を着るのは弁護士くらいになった。
そしてアメリカのテレビドラマ『スーツ』では「弁護士はハッタリだ。背広だ」と言っている。アメリカの法廷は敵との対決だから。刑事被告人も法廷では正装する。推定無罪なのに偏見で観られてはならないから。なのに手錠をかけたまま入廷させられる日本の裁判所のすることは悪意である。
また、日本の弁護士は依頼人に対しての礼儀で正装しているし、民事訴訟の原告や被告などの当時者は、堂々として見せるために着る。普段着で法廷に入ると、なんだか借金を返さないで訴えられた人みたいだからだ。 そこには『男はつらいよ』のタコ社長みたいな恰好の人もいて、資金繰りで苦しむ零細企業の経営者が法廷に来ているのだ。
あとはヤクザである。
やはり法廷では背広で決めている。もう少しオシャレな方がいいのにと余計なお節介を言いたくなる。日本のヤクザ映画では予算の関係もあって華やかではない。これは和装でも同じだ。
よく、映画を観るとアメリカのギャングはビジネスライクだからスーツは制服みたいにお揃いであるが、フランス映画のギャングだと一匹狼がカッコイイということでジャンギャバンやアランドロンが颯爽と決めている。これがイタリアだと『ゴッドファーザー』のようにまた違ったオシャレである。アルパチーノは身長が170センチに満たない。それでもスーツが決まっていたから、背が低くてもスーツは似合うということで日本での売上向上に映画が貢献したと言われている。アルパチーノも悪役のジョースピネルも法廷でのスーツが実にオシャレであった。
外国の映画では背広もオリジナルの衣装である。
医療裁判で陪審員制度の理想を描いた『評決』で、ポールニューマンの弁護士も、敵対するジェームスメイソンの弁護士も、劇中で着ているスーツはオリジナルのデザインであった。
こちらの弁護士すなわち『ゴッドファーザー』でロバートデュバルの顧問弁護士はコルレオーネ一家の一員だが養子でドイツ系アメリカ人のうえ一応カタギだからスーツはやや堅苦しいデザインであった。
また『ゴッドファーザー』のシチリア系とは違いナポリ系のアルカポネと対決する警官を描いた『アンタッチャブル』では衣装のデザインがジョルジオアルマーニだった。
アランドロンもアルマーニも死んだね。
ということも紳士服専門店の店員と話した。ダーバンの宣伝はアランドロンだった。かつては水商売の男の必須がダーバンだった。今は俳優の向井理である。その出演作からするといかがなものかと、これまた余計なことを思ってしまう。
これについて大量生産の御三家であるAOKI・青山・コナカの店員たちに訊いたら、やはり昔のアランドロンの当時の方が景気が良かったのではないかと言っていた。


