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不動産屋の営業

  • 執筆者の写真: 井上靜
    井上靜
  • 2024年10月25日
  • 読了時間: 2分

 不動産屋の営業は、自分でやったことがある。

 最初は契約書を作る仕事のはずなのに、営業をやらされてしまい、それで辞めたのだった。その不動産屋が今は支店の統廃合で無くなっていた。その少し前に電話で戻って来てくれと言われて断っていた。

 他の不動産業者に、この話をすると、「契約書を作る仕事だけのはずが」と言いかけると「営業をやらされたんでしょう」と先回りされる。だいたい、そんなものだからだ。


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 ところで、不動産を物色していたさいのこと。

 場所が良い駐車場のある値段も手頃な新築の住宅があって、興味を示したところ、その営業の若い男が、今から彼の車で見に行かないかと言う。その時は用があるから後日として、店に電話をかけると言ったのだが、彼は店ではなく彼の携帯電話にかけてほしいと必死だった。

 店に電話して彼がいるかと言ったら、そこでたまたま出た人が「その話ならこちらで承ります」と勝手に進めてしまったら、その人の営業成績になってしまうから。横取りされるのは悔しい。それで「解った、解った」と。


 似たようなことは床屋でもあった。

 前に行っていた床屋の従業員からハガキが来て、自宅からより近いところに独力開業したので来て欲しいということだった。

 「お世話になりました」と書いてあるが、彼が担当したことは一度も無かった。これは顧客名簿をコッソリ写したのだと直ぐに解った。

 自宅近くの美容室では、顧客名簿を持ち出そうとした女性の従業員と女性の経営者が喧嘩して殺人事件に発展し、テレビで取り上げられた、ということがあった。


 不動産屋ではなおさらだろう。

 これは直接に見ていたことがあるので知っていることだが、何と言っても最も値が張る商品である。仕方なく営業をしていたさい、一戸建てを売却したいという人がいて契約書を作ったが、その後に現地に赴くなどは二十代の社員に任せていたところ、商談成立して仲介手数料でも結構な額になったから、その社員は大喜びで、こっちが休日で自宅にいる時に電話してきて大喜びで「ありがとうごさいます」と言った。

 これだから新築を売るとなると、横取りする同僚もいるだろうし、それをやられたら悔しくて地団駄踏んでいることだろう。

 それで必死になって「携帯電話にかけて下さい」だったわけだ。とにかく営業は大変である。だから遣り甲斐があるという人と嫌がる人がいるのだ。

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