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  • 執筆者の写真井上靜

個人経営の書店は絶滅寸前

 全国で書店が減少している。

 そこで国が盛り上げのイベントを後押ししようと言うから、書店に行く楽しみを知らない官僚のオソマツな発想だと呆れられている。

 そもそも、書店の経営難による廃業は、消費税など国の政策によって憂き目に遭っているのだから、それに対する反省もない国に本当のやる気など無いに決まっている。



 個人経営の書店など絶滅寸前である。

 かつては個人経営の書店の経営者にインテリが多くいて、本について訊けば何でも答えてくれたものだった。ところが大手の書店だと店員が何も知らず、訊けば「そこに端末があるので検索してください」なので、これではみんなネットで買うだろう。

 あと、このブログの題の由来でもあるカールクラウスの代表作(長大な反戦戯曲)『人類最期の日々』について書店員に訊いたら「ハヤカワですか創元ですか」とSFと勘違いされたし、さらには「天声人語ってコミックのことですね」と言われ、まったく書店員の無茶苦茶も極まっている。


 しかし簡単に開業できるから書店の経営を始める人も昔からいた。

 なぜなら、本は委託販売なので、店を作れば商品の仕入にかかる経費が無用だから、開業の資金が乏しくても出来るのだ。母子家庭で店を始める人も少なくなかった。

 しかし、売れるはずだとか、大手出版社と問屋(取次)の契約だとかで、意に沿わない商品を押し付けられ、嫌になって廃業する書店もある。これはポルノのことで、まず性的なポルノがあり、また愛国ポルノというべきヘイト本もある。これでは堪らないという人がいて当然のこと。


 あと個人経営の書店で個人的な思い出がある。

 小学生の時、ある書店の「お得意様」であったが、その経営者である女性の息子に自転車を壊された。これは故意ではなく野球のバットを停めてある自転車にぶつけたのだが、この修理代を払う交渉に独りで来いと呼び出され、周囲の人たちから「あの本屋の息子は危ないから行ってはいけない」と同級生たちに止められたのだ。小学校の先生にまで言われた。

 しばらくしたら、人の流れで駅に近い場所に新しい書店が出来た。店舗の広さも品揃えの充実も、旧来の店より勝っていた。それで売上が激減した経営者の女性は、自棄になってしまい、廃業するから商品を勝手に持って行っていいと客に言った。それで貰ったという同級生もいた。

 こうして、その書店は潰れたのだった。しかし、もっと条件の悪い所にある古い書店が近くに二軒もあって、こちらは、その後も、かなり続いていた。だから潰れた書店は経営者の才覚とか、息子の悪さとか、そちらの影響があったのではないかと思っている。


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