世渡り上手な立花隆の死
- 井上靜

- 2021年6月25日
- 読了時間: 4分
更新日:2021年6月25日
今では「たちばなたかし」と入力すると立花隆ではなく立花孝志と変換される。NHK批判だけで議員にまでなった男の方が有名となったのは、それだけNHKが国民の敵と化している実態とともに、「田中角栄研究」も過去の遺物と化したからだろう。
その古いほうの立花隆が病死した。このさいマスコミの報道では、やはり「田中角栄研究の立花隆」という見出しであった。
かつて双璧のジャーナリストとして、本多勝一が行動派なら、立花隆は資料派と言われた。それで立花隆は膨大の書籍を収納する書斎専用の建物を所持し、壁面に猫の顔のイラストが描かれていたので「立花隆の猫ビル」と呼ばれ、テレビで筑紫哲也が取材して内部まで紹介していたことがある。だから知っている人は多い。猫は立花隆が好きな動物ということだった。
このさい筑紫哲也は、立花隆が高価なオーディオ機器を所持しているけれど、趣味ではなく仕事場だから持ち込んでいないと指摘していた。立花隆は赤塚不二夫と共にモノカキでオーディオマニアとして知られている。あと、色々な音楽を聴くけれど、好きな歌手は藤圭子だと公言していた。その当時、彼女の娘は活躍していなかった。
また、本多勝一は朝日新聞の当時からその後まで文芸春秋と敵対していたこともあるが、その前から文芸春秋とは無関係に立花隆には手厳しかった。
立花隆の代表作『田中角栄研究』は飽くまで反田中であって反自民党ではないが、『日本共産党の研究は反宮本ではなく反共産党であると指摘し、立花隆は田中角栄を調べたのも好奇心からだと述べるが、なぜか原発や天皇にはその好奇心が無く、実は商売からの処世術ではないかと推測していた。
いちおう、立花隆は他の評論家よりは天皇の戦争責任について、本多勝一ほどではないが、批判的に言及してはいたが。
さらに、お笑い芸人集団「大川興業」代表の「大川総裁」は、読書好きのため読み終わってからも取っておきたい本が溜まり置き場に困って、広い家に引っ越そうとマンションなど賃貸物件を探していたが、不動産屋から芸能人は収入が不安定だと難色を示されたので職業差別だと怒りながら「猫ビルみたいなのを建てればいいが、金がかかる。私は不器用なので他人の金脈を追及して自分の金脈を作るなんて真似はできない」と皮肉っていた。
もともと田中金脈の追及は、日本共産党の機関紙『赤旗』が立花隆より数年前に追及していたことで、立花隆の代表作は共産党の後追いである。他の著書も、共産党や中核派と革マル派といった左派批判については、当の左派から徹底反論はもちろんのこと政治学の分野からも風説だけに基づいた杜撰で悪意あるものだと指摘を受けていたし、映画化された宇宙ものとか自然科学関係でも理科系の人たちを中心に、せめてブルーバックスくらい読んで基礎から勉強してからにしろと批判が起きていた。
ようするに、立花隆は今の百田尚樹や門田龍将らのように、他人が努力した成果から上澄みをさらってあたかも自分が立派なことを書いているように見せかけて上手にマスメディアの波に乗りベストセラーにした一人だった。
しかも、立花隆は反共というだけでなく80年代すでに出版業界では文春お抱え右派ライターという定義づけをされていて、田中角栄を擁護する上智大学の渡部昇一を徹底批判したのも、後に文春を出てWILL誌を創刊する堤堯らの路線と対立した文春内ゲバという見方をされていた。堤からは酒に酔って暴言を吐かれたと立花は述べていた。
それを勘違いして、権力にすりよる渡部のデタラメを批判して立花は立派という人たちがいるので、あの当時を知らない人が多いことを再認識した。そこには年齢的に知らなかったわけがない人までいるのだから。
ただ、知らなかったでは済まない。
まず反共産党の左翼で、変節する前の創価学会と仲良くしていた出版社が、文藝春秋社の右派人脈を告発し、これに文藝春秋社は取次に働きかけて出版妨害したから、最近の週刊新潮への妨害にも通ずる手口だが、その告発本の中で立花も問題に挙げられていたし、別個に共産党の機関紙誌も詳しく立花に反論し、さらにずっと後には週刊金曜日にも立花の人権無視体質に厳しい批判が掲載されていた。
これらを知らない人たちは、まず事実を確認することだ。
それにしても、立花隆が死んでマスコミが「知の巨人」と評していたのには失笑させられた。
これは立花隆が「あの渡部さんってバカなんじゃないの」と文藝春秋の編集者に言った渡部昇一も死んだら「知の巨人」とWILLが書いていたからだ。「痴」の間違いではないかと真面目に言われていたが、立花隆は『知のソフトウエア』、渡部昇一は『知的生活の方法』という同じような本を書いていた。題名だけでなく中身も実質同じであった。ムジナはタヌキと巣穴をシェアすることがあるけれど、そこは文藝春秋ということで、まさに「同じ穴のムジナ」であった。




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