『輝ける嘘』のニール=シーハン死去
- 井上靜

- 2021年1月11日
- 読了時間: 3分
更新日:2021年6月23日
米国のジャーナリストとして活躍していたニール=シーハンが死去したとの報。
彼はベトナム戦争関係の記事で知られる。機密文書の入手でスクープ報道となったが、あれは仕組まれたリーク情報で、戦争で軍事産業は大いに稼いだから、もう潮時だということだったはずである。
これを当時から米国以外のジャーナリストは指摘していた。つまり米国のジャーナリズムが権力に対抗できて立派というのが正に「明るく輝く嘘」であった。
ところで、シーハン記者の著作として代表的なのが『輝ける噓』である。
この原題直訳が「明るく輝く噓」で、『輝ける噓』は集英社から発行された邦訳の題名である。映画化されているけれど、こちらの邦題がなんと『USプラトーン』とパチモンみたいであったから、おそらく原作はビューリッツアー賞のノンフィクションだと知らない人が付けたのではないかと言われていた。

その内容は、ジョン=ヴァンという米国軍人を通じてのベトナム戦争であった。
かつてジョン=ヴァンという米国軍人がいて、ベトナム戦争で活躍していたが、そのさなか不慮の事故により墜落死する。それまで彼は戦争の口実とする傀儡政権の樹立と支援などに尽力してきた。ただ、ここに嘘があると彼は指摘していた。立派な大義名分は実態と異なり、これは「明るく輝く噓」である。
しかし、この嘘は彼にとって重要なことではなかった。彼は地方の庶民の出で、富裕ではなく、彼の母親マーテルは「私はマーテル。世界でたった一人の私を、私は大好き」というような人だったと周囲は評していた。そのように自己愛ばかり強い母親など、家庭でもあまり幸福とは言えなかった彼は、地方の富裕ではない出自の人によくあるように軍隊に入る。そこで戦争が起きると、命の心配より、立身出世の絶好の機会と受け止める。
こうしたジョン=ヴァンを通じてベトナム戦争が描かれるニール=シーハンの『輝ける噓』。
結局、乗っていた軍用機が墜落してジョン=ヴァンは事故死し、その後、彼が尽力したベトナム戦争は、彼の指摘していた「明るく輝く噓」が問題になる。しかし、これを彼は知ることがなかった。彼は立身出世を求めて働き、仕事は順調で、業績が出来て、自分は人生の成功者なのだと信じたまま世を去ったのだった。
なんとも切ない結末の本だが、これは、ベトナム戦争を真っ向から批判するのではなく、ベトナムで一生懸命に働いたアメリカ庶民出軍人の生涯から戦争の虚しさを描いたということだろう。
それはいいが、邦訳が酷すぎた。
これは読んだ人はみんな言う。非常に長大な書物で読みにくいから、内容に興味があるから最後まで読んだものの、その間が大変だった。



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