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​炬火 Die Fackel 

 長崎市の原爆慰を米国大使は祝典と言った。

 戦勝国としての意識が、戦争の犠牲者を追悼することも祝勝と認識させているのだろう。だからオバマ大統領は記録映画の上演で原爆の爆発を見て拍手していた。

 この一方でロシアのプーチン大統領は十字を切って犠牲者を追悼していた。プーチン大統領は広島と長崎の原爆は無用だったとし、アメリカを批判していた。これは昔からソビエト連邦の歴史教科書でも説かれていたことである。

 また、アメリカ国内でもオリバーストーン監督が語り部を務めた近代アメリカ史のテレビドキュメンタリーでも、原爆の所持で急に気が大きくなり増長していたトルーマン大統領の姿勢をとりあげ、使用の正当性に疑問を投げかけていた。


 そしてイスラエルのガザ殺戮のこと。

 これに抗議する長崎市の追悼式を、アメリカをはじめとした西側諸国はボイコットした。ここまで日本はコケにされている。それでも日本のマスコミは、西側諸国に迎合していれば良いという態度を崩さない。

 だから、中国のことでもロシアのことでも同じ姿勢である。ところが傀儡政権となっている自民党を支持する人たちならともかく、反対に批判的な人たちが同じ認識を持っているのはなぜか。自民党政権を支えるマスコミの報道を鵜吞みにしているからだ。


 記者クラブ垂れ流し受け売り報道の実態と害毒は既に知られている。

 そして冤罪事件など権力による深刻な人権侵害を、報道が世間を煽り立て「セカンドレイプ」していることも昔から問題になっている。

 しかし警察が発表したことなら間違っていても信じるに足るものであるとされる。だから名誉毀損や業務妨害で裁判に訴えても勝てない。

 これと同じ調子で、国際問題も報道されている。冤罪で人権侵害しても警視庁記者クラブを鵜呑みにしたなら許されるのと同じように、西側諸国に合わせていれば良いというのが日本のマスコミである。


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 自民党政権に批判的なのに同じ対米隷属の人たち。

 これも戦後のアメリカによる占領政策が成功した証なのだろうが、それにしても、野党を支持してはいても、立憲党を支持している人たちは保守だから当然のことだし、共産党を支持している人たちも同じで、これは機関紙『赤旗』が売れなくて金が無く商業紙の受け売りをしている影響だけど、それ以外の人たちまで同じであることが圧倒的というほどである。

 それだけ、関心があるようでいて実は無関心の人ばかりだから大勢に絡めとられやすいということだろう。

 
 
 

 毎年、必ず、うんざりする話。

 八月十五日は終戦の日ではないのに、日本だけが戦没者の追悼式とか、政府が国民を誤解に導いて、国民の多くは騙されている。

 先日、『八月の狂詩曲』の話題を取り上げたが、その次に黒澤明監督が作った映画『まあだだよ』で、主人公の内田百閒が唄う中に「♪戦に負けて占領されて、終戦なんぞとバカを言い」との部分があり、聞いた弟子たちは笑っていた。


 八月十五日は敗戦の日である。

 日本は戦争で勝つことを諦めたという発表を公式に天皇がラジオで表明したから、当たり前である。それで終わってはいない。実際、それから九月になるまでアメリカ軍と散発的にだが戦闘は続いていた。

 そして樺太にはソビエト連邦軍が侵攻して犠牲者も出ていた。このさいの占領にアメリカは協力していた。ソビエトがやっつけたドイツの半分をアメリカは頂戴したから、代わりにアメリカがやっつけた日本の一部をソビエトにくれてやったのだ。


 ほんとうに戦争が終わったのは九月二日である。

 これは戦争に参加したり巻き込まれたりした国々では常識であるのに、日本は知らない人がいて、なぜなら政府が誤魔化しているからだ。

 戦争は相手があるから、降参だと一方が言っても、相手が同意してくれないと終わらない。日本は米軍艦ミズリーの上で全権大使が降伏文書に署名して、これで戦争が終わったのだ。


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 この事実を知らせないことで好都合な人たちもいる。

 天皇が負けたと言って戦争が終わったという不自然なことに国民が気づかないと好都合な人たちが政府にいる。また、八月十五日の後にアメリカ軍とソビエト軍が日本を攻撃したのは不当だと非難もできるし、朝鮮戦争が停止しただけで終戦も休戦もしてないから身構えているのに、それが無意味に周辺の国を攻撃したがっているというバカげたプロパガンダをするのにも役立つ。


 そして今もウクライナ問題でプロパガンダを垂れ流している。

 プーチン大統領は、もう停戦が出来ない状態であると表明した。ウクライナ軍がなりふり構わずで無茶苦茶だから。それというのも背後でけしかける西側諸国のため。

 まったくその通りだが、樺太侵攻の時と同じように事情を誤魔化している。

 そして、政府のデタラメに対して野党が批判して八月十五日ではなく九月二日に戦没者追悼式を変えろと主張しないのも悪い。

 
 
 

更新日:2024年8月21日

 広島が原爆忌でロシアを招待せずイスラエルは招待した。

 ウクライナ問題ではアメリカと西欧が悪いと指摘されているのに。それ以上に、ガザの殺戮でイスラエルが非難されているのに。

 長崎は原爆忌でイスラエルを招待しなかった。すると、これに怒ってアメリカとカナダおよび西欧など西側諸国がボイコットした。ガザ殺戮のイスラエルに戦争の犠牲者を追悼する資格なしというなら、そんなイスラエルと一緒になって原爆の追悼をしてやらないというわけだ。


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 原爆の記録映画に、オバマ大統領は拍手し、プーチン大統領は十字を切っていた。

 これは語り草である。つまり非戦闘員の日本人が核攻撃で虐殺されたことについて、加害国のアメリカは大統領が喝采して、もう一方の戦勝国であるロシアの大統領は犠牲者に追悼の意を示したのだ。

 そのうえ、ロシアを一方的に非難しながら被爆地がイスラエルの殺戮に抗議するなんてケシカランというわけだ。

 この調子だから、イラク、リビア、シリアの情勢についても、推して知るべきだった。


 とっくに日本人は目を覚ましているべきだった。

 もちろんマスメディアの悪影響がある。NHKも朝日新聞も、NATO軍記者クラブからの情報を検証せず、独自取材もなく、垂れ流し続けている。世界中の大手メディアが一斉に報じているから正しいのではなく、出所が同じだから金太郎飴なのだ。どれもAPやAFPなどが流布したものだ。

 また、イスラエルを擁護しないとユダヤ系シオニスト企業からの報復が怖いから、西側諸国は長崎をボイコットしたと指摘されているけれど、これはマスメディアも同じで、かつて文藝春秋社が広告で締め上げられ敗北したことも語り草である。


 なぜか共産党の機関紙『赤旗』も同調している。

 広告で経営していないから告発できるというのが売りだったけれど、紙製メディアの衰退で新聞が売れず、経費のかかる海外報道が粗末になり大手メディアの受け売りばかりしているからだ。共産党の主な収入原は機関紙である。昔から『赤旗』は「訴える新聞ではなく売る新聞。読む新聞ではなく買う新聞」と言われていたが、紙製メディアが衰退した今に至っては政党助成金を拒否して立派な共産党を応援するため『赤旗』を買ってやるのはいいが国際問題の記事は読んではいけない、という劣悪さである。


 これでは多くの日本人が目を覚ますことができなくて当然だ。

 しかし、今年の広島と長崎のことで、さすがに気づいたり疑問を感じたりの人は、決して少なくないはずだ。

 
 
 
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