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黄色と黒はリゲインとオーストリア帝国旗

  • 執筆者の写真: 井上靜
    井上靜
  • 2022年1月30日
  • 読了時間: 2分

 平成元年前後とかバブル期とかいわれる時に、栄養ドリンク剤の宣伝歌がウケた。

 これは三共の発売したリゲインという商品で、俳優の時任三郎が出演して唄っていた。曲のノリが良いこともあり60万枚くらい売れたという。それくらいだったから、当時はカラオケで唄ったり出勤前に聴いたりで気合いを入れる勤め人もいた。しょせんサラリーマンなのに「ビジネスマン」と気取って恥じない歌詞は、さすがバブル時の強壮剤である。

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 大学でドイツ語を習っていた先生はオーストリア文学が専門だった。

 その文学の講義もしていた。ここでRシュトラウスのオペラ『ばらの騎士』と台本の作家ホフマンスタールのことや、ウイーンフィルのニューイヤーコンサートなど華やかな一方でオーストリア帝国が戦争ばかりしていたこと、これを厳しく批判や風刺をしていたカール-クラウスはホフマンスタールの戦争翼賛も批判したこと、などが取り上げられた。

 これがリゲインと、どう関係あるのか。


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 リゲインの宣伝歌は「♪黄色と黒は勇気の印」と歌い出す。

 これは瓶のラベルが黄色地に黒文字だったからだ。このパロディで「♪黄色と黒は工事の印、24時間、通れませんか」というのもあった。

 それはともかく、オーストリア帝国では戦争費用を寄付したら赤い羽根みたいに「愛国十字章」を胸に付けることになっていた。昔から今までオーストリア国旗は赤と白だが、このハプスブルク王朝の時代だけ国旗は黄色と黒であった。だから愛国十字章は黄色と黒の配色である。そして戦費の寄付を国民に呼びかける政府広報のキャッチコピーは「黄色と黒は愛国の印」だった。これをカール-クラウスは戦争を批判する大著『人類最期の日々』で皮肉っていた。


 リゲインの宣伝はオーストリア帝国のプロパガンダを意識したものだったのか。

 もしも事情を知っている人がいたら教えて欲しい。もしかすると意識したのではないか。インターネットで検索しても宣伝と歌の由来は出てこなかった。

 そのオーストリアも世紀末に「泡沫経済」という正に「バブル」の時代から戦争の時代となったのだった。そしてハプスブルク王朝は滅びてナチス時代となった。日本のバブルもはじけてリゲインのような宣伝はなくなったうえ政治的にも似た雰囲気となってきた。





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