弁護士なんてしょせん文系なのが医療訴訟で露呈する
- 井上靜

- 9月22日
- 読了時間: 3分
拙書『防衛医大…』https://amzn.asia/d/iyi83a4に関連する話題が出ていることである。
被告側の医師が、その弁解のなかで、自分は日本で唯一、それに関する論文を発表しているから、他の医師が知らないことを知っているという奇妙な自画自賛した。その論文の中身こそが問題になるが、それ以前の問題として、その医師はこの件について法廷で積極的ではなかった。病院の側に立つ弁護士が積極的に言っていただけで、それを法廷で言われても医師は口を濁していた。
実は、その医師は論文を書いていなかったのだ。
その医師は同じ医大の他の医師が書いた論文に連名していただけだった。
そして、実際に書いた医師は、そのあと出世して、他のもっと格が上の医学部の教授となっていた。一方、被告の医師は格下の医大の講師止まりであった。
それなのに「日本一」と弁護士から法廷で言われたのだから、医師としては口を濁して当たり前である。
もともと理科系では、研究に直接の関与がない者まで論文に連名することが普通にある。これを、弁護士は文系なので知らなかったのだろうと言う人がいた。この人は大学院で理系であった。

しかし関与してないのに連名するのは弁護士もやることだ。
これは複数の弁護士が属している法律事務所が、よくやっている。実際には弁護士が一人で当たっているのに、同じ法律事務所の弁護士たちが訴状で連名する。要するにコケ脅しである。古くて手垢まみれの手法だから、今時やるとしたら相手が弁護士を雇っていない場合である。
このようなコケ脅しを研究論文では用いないと思っているのだろうか。そこまで無知なのだろうか。いくら文系でも御粗末すぎる。
もちろん弁護士には目論見があった。
その中身を差し置いて、論文を発表したから「日本一」であると強弁し、だから間違いがないと滑稽なほど言い張り通した。他の専門医の鑑定や意見は無用だと必死で抵抗した。これで通用すると本気で思っていたかどうかは不明だが、こうするしか他に方法が思いつかなかったようだった。
それでも「政治的配慮」を裁判所に求めてのことなら、あり得るやり方である。特に自衛隊関係の場合は。
ここで深刻なのは医師の医学界での立場と面子である。
なぜなら裁判とは別に、医師が恥を曝してしまうので。これは実際に、その医師が他の医師たちから言われていた。その医師の年齢やキャリアからして「日本一」なんてあり得ないし、仮に高い評価を受けている人でも「日本一」だから間違わないなんて、とんでもないこと。しかも連名した論文を持ち出しコケ脅しに利用するなんて、裁判官も文系だから騙せたとしても医学界では笑い者である。
つまり弁護士は、訴訟の戦術しか考えておらず、その影響で自分の依頼者の側に居る者らがどうなろうと知ったことではないのだ。これは弁護士全般に言えることである。
だから弁護士に依頼する場合、これも考慮しなければならない。むしろ料金のことより重要だ。



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