坂本弁護士は浮かばれない
- 井上靜

- 9月8日
- 読了時間: 4分
更新日:9月22日
坂本弁護士一家の遺体が発見されて30年になった。
この日、江川紹子はSNSで発信した。この事件のあと生き残った者の責任なるものを。いったい、どんな責任なのか。
かつて彼女はテレビに出たさい、危ない新興宗教団体について坂本弁護士に相談を自分がもちかけたから、巻き込んでしまったと言って号泣して見せた。これが唐突でわざとらしい感じだったから、女子高生たちが「ウソ泣きオバサン江川紹子」と言っていたことがマスメディアで取り上げられていた。
また、江川紹子は、事件のおかげでテレビに連日の露出となった。
このギャラのおかげで、出演する度に着ている服が見るからに高価そうになってゆくから、事件の犠牲者を踏み台にして自分の利益にしている江川紹子、というのが当時の社会一般の評価だった。深刻な社会問題にさいしての「火事場泥棒の焼け太り」とも言われていた。安倍晋三の殺害事件でも同じ現象が見られたが、とにかくあの当時のことを知らない人や忘れた人ばかりではない。
しかも江川紹子は、文具のカッターナイフを持っていたことを「銃刀法違反」として別件逮捕している警察が問題になったさい、違法に逮捕されたのが事件を起こした宗教団体の信者だから「今回は仕方ないと思います」とテレビでトンデモ発言した。
右翼活動家の鈴木邦男が、江川紹子のような発言は危険だと指摘した。
やはり江川紹子の発言ばかり流すと不公正であるとテレビ局も判断したのだろう。鈴木邦男を出演させて「カッターナイフで銃刀法違反にする別件逮捕のようなことは、政治活動をしている者に対して警察が弾圧するために散々やってきたことだ。私と私の仲間もやられている。別件逮捕だけでも違法であるし、権力の人権侵害に対して今回だけの例外だなんて言ってはいけない」と、事実や体験に基いて指摘していた。
この鈴木邦男の指摘は常識の提示であり、また江川紹子の非常識と嫌らしい権力ヘツライに対する批判でもあった。
映画監督の山際永三も批判していた。
よくテレビドラマの演出もしていた人だったが、その一方で、テレビ特にワイドショーの人権侵害を危惧し、それを問題にする運動を始めた。その中で、組織の幹部が事件を起こした新興宗教団体の、事件とは関係ない一般信者とその家族へのメディアリンチ、とくに悪質なのは子供まで巻き込む、という煽情的で不真面目なテレビ番組を問題にしていた。
そのようなテレビ番組に出ている江川紹子と有田芳生の、官憲にすり寄っての威張り腐った言質や態度はまさに「虎の威を借る狐」だと指摘していた。これは世間一般でも、やはり山際永三と同じ受け止め方であったから、江川紹子や有田芳生は評判が悪かった。
しかし、そういう権勢に媚びる人こそマスメディアは起用し続ける。それで得た知名度を利用して有田芳生は姑息な国会議員になった。

日本弁護士連合会も空々しい。
坂本弁護士一家皆殺し事件節目の30年で、渕上玲子会長が談話した。「弁護士が妨害に屈したら、市民の人権と社会正義が失われる」だとさ。
現実には、坂本弁護士事件から弁護士はことごとく萎縮している。坂本弁護士が属していた法律事務所のように「人権派」だと、狂信者と敵対しても警察が守ってくれない。だから警察を批判するのではなく、権力の迫害を受けた人達を無視したり放置したり侮辱までしたりする。どこの法律事務所でも、どこの弁護士でも、だいたいそうなってしまい、闘うことは避ける。問題から逃げてばかり。各弁護士会と日本弁護士連合会は、権力の人権侵害に味方して善良な市民を迫害している。
それを誤魔化すため、マスコミむけに空々しい談話をしてみせる。心にも無いことを。
これでは坂本弁護士も浮かばれないだろうが、犠牲になったのが他の弁護士だったら、これに対して坂本弁護士はどうしたか。
おそらく法曹界の大勢に流されて抗することはできないでいるだろう。



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