南京大虐殺と南京事件
- 井上靜

- 5月20日
- 読了時間: 2分
例えば「オウム真理教事件」とは、オウム真理教が起こした事件をひっくるめての総称である。
この中には、坂本弁護士一家皆殺し事件とか、松本と霞が関でサリン散布した毒ガス殺傷事件など、がある。
これと同様に、「南京事件」とは、南京で日本軍が起こした捕虜虐殺や婦女暴行などの戦争犯罪をひっくるめて言う総称として言われることがある。
この一方で、「南京大虐殺」の略称として「南京事件」と言う場合もある。
これに反対する見解もある。
連載記事のち単行本『南京への道』の本多勝一記者(当時、朝日新聞)は「南京事件」というのは紛らわしいので不適切と述べていた。
南京事件とは歴史上、名称が定まった事件が複数ある。
1913年 、袁世凱配下の張勲の軍隊により、南京で在留日本人3名が殺害され、居留民の家屋が略奪された事件。
1927年、蔣介石の北伐軍が南京入城時に、外国領事館と居留民を襲撃し、これを北伐軍の仕業とみなした米英の軍艦が報復として南京を砲撃した事件。
1976年、毛沢東の文化大革命に反対し、鄧小平の経済改革を支持する南京での活動。
このように、1937年12月から1938年初めにかけて日本軍が南京で起こした事件だけでない。
したがって、南京で起きた他の事件も「南京事件」と呼ばれているので、間違いとは言えない。しかし紛らわしい。それで、用法によって使い分けていることが多い。
このような話を、なぜするのかというと、今年、虐殺があった場所から生き延びた人がまた一人亡くなったことに関しての話題で、「南京事件」でも「南京虐殺事件」でも「事件」をつけると、未決のような感じがするので、東京裁判で決着しているのだから事件とつけるのは白黒はっきりしない灰色という意味だと言い張る人がいたからだ。
しかし、そう考える人は、どう探しても、その人だけだった。変わった思考をする人だったのだろう。




コメント