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  • 執筆者の写真井上靜

『セブンティーン』と『ゴールデンボーイ』

更新日:2023年11月5日


 かつて日本会議を告発して有名になった人がいる。

 ちょうど今、統一協会を告発したことで時の人となった人と同じである。この人については、自民党支持者などから「山上容疑者の方に足を向けて寝られない」と皮肉を言われていたが、それはともかく、日本会議を告発して有名になった人の方は、右翼のテロリストという話題のさい山口二矢も知らないで右翼やっている者がいることを嘲っていた。

 ところが「左翼が知らないなら当たり前だが、右翼が知らないなんて滑稽だ」と言っていたけれど、これは逆だろう。



 大江健三郎が『セブンティーン』という小説を書いていた。

 これは右翼テロの実行犯となった17歳の山口が主人公のモデルだった。これを読んでいるから左翼がむしろ右翼より知っていて、一方、右翼はだいたい大江健三郎の小説など読まないから(三島由紀夫も読まないし、小説一般も、小説に限らず本全体も、新聞や雑誌も、もしかすると文字を全く、読まない人が右翼には大勢いるはずで)山口二矢といえば赤尾敏に鉄砲玉やらされた17歳のガキという認識だろう。赤尾敏も、一円玉などを作るアルミニウム加工会社が親戚で、それに活動資金を頼って「愛国」と運動していた「永遠の政治青年」であった。それら一連の言動により田中清玄から小物だと切って捨てられたのだ。


 しかし右翼塾のようなものを主催している人には山口が評価されている。

 これは操られる十代を重宝がるからだろう。煽てていることが実は利用されているのだと知られては困る。それに、十代だから未熟で見境がつかないというのを早熟で信念を持っているのだと評価したとしても、それはテロリズムと殺人を公然と賛美することであり、そんな人に十代の人を近づけるべきでないことは、誰でも容易に解かることである。



 『ゴールデンボーイ』という映画があった。

 この原作になったスチーブンキングの小説『転落の夏』は、ナチス残党の老人に興味本位で接近した少年が次第に影響されて無差別殺人に走るという怖い話だが、危なすぎるということでアメリカの出版社はオムニバス集への収録を最初は躊躇ったという。

 これは大江健三郎の『セブンティーン』とは異相の小説だが、どちらも極右の老人に影響された少年という共通点があって、この種の信念とは果たして自ら会得したものかとなると実に疑問ということである。

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