SFはどこまで実現するか
- 井上靜

- 2021年8月2日
- 読了時間: 2分

昔、読んだブルーバックスで「SFはどこまで実現するか」というのがあった。
これは、例えば衛星軌道までのエレベーターなど、SFに出てくる技術が実現するかを考察したものであったが、工学系が中心で、医学などは無かったと記憶している。
もしもの医学は、SF作家アランEナース作の短編『コフィン療法』という風邪を駆逐する話があり、風邪をひかなくなった人類は嗅覚が過敏になりすぎて少しの臭いでも気になりノイローゼ気味という皮肉だった。
また、田中芳樹の『銀河英雄伝説』では、どんなに医学が進歩しても風邪だけは克服できず、戦勝祝賀会で酒を飲み美女と踊っている司令官の姿を敵方は想像しているが、実は無理が祟って風邪をこじらせ寝込んでいた。あと、小松左京の『復活の日』は兵器として開発されたウイルスによる肺炎で地上の生物が絶滅に近くなる。
あの『スタートレック』は新シリーズになると、科学技術の進歩で貧困や病気などが克服され、そのあと人類はどう生きるのが理想かを追及する話になる。
その監督もする宇宙船副長役ジョナサン-フレイクスも「さほど資本主義的でない世界」と言っていた。彼が監督した映画の会話で、未来では宇宙船に建造費など無いと言っている。それだけ科学技術の進歩があり、日常生活でも欠乏から解放されていて、これこそ「生産力史観」である。
そのためか、日本共産党の志位委員長はテレビに出たさい好きな映画を問われて最初に挙げたのが『スタートレック』と言っていた。ただし「アメリカニズムみたいな部分は気に入らない」とも言い添えていたから、テレビを見ていて志位委員長と意見が一致したと思ったものだ。
しかし、今の段階で実現しているのはPKディックの小説である。
今、オリンピックの計算違いでボランティア向けの弁当が大量に廃棄されていると報じられた。この一方では、生活苦の人たちのための炊き出しに行列が出来ている。ディックの小説『偶然世界』には、生産物が大量に廃棄処分される様子を、欲しくても手に入らない人たちが指をくわえて観ている様子が描かれている。
また同じくディックの小説『火星のタイムスリップ』では、貴重な水を資本家が独占し、それによって社会を支配している。これは水道民営化で現実化の一歩手前である。
どうやら、実現しているのは科学技術ではなく、その社会的な悪影響の方であるらしい。



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