top of page

水道橋博士を中傷して「絶賛炎上中」の劇作家

  • 執筆者の写真: 井上靜
    井上靜
  • 2022年6月17日
  • 読了時間: 3分

 選挙に立候補した水道橋博士を中傷した唐沢俊一という人が「炎上」した。

 そこで問題になっているのは、唐沢俊一が開陳した奇妙な認識である。水道橋博士の過ごしてきた時代は共産主義を讃える本ばかりだったから影響があるというのだが、まず左翼運動が今より遥かに盛んだった時代ならかつて存在したけれど、その当時すなわち1960年代末から1970年代初頭、影響されるどころか水道橋博士は幼稚園児か小学校低学年だったし、また出版事情からして共産主義賛美の本ばかりだった時代が日本に存在したとは到底いえない。


 ところが唐沢俊一という人は、左翼本の専門「ウニタ書店」があったことをもって左翼本が多くて影響された人も多いという根拠を後から付け加えた。

 これでは「まんがの森」を引き合いに出してHマンガ好きのオタクばかりと言うも同然だ。それでもマンガは諸外国に比して日本は多く、他にマンガとアニメが盛んなのはフランスだけれど、フランスは革命の伝統もあって左翼は盛んだが、日本は左翼が盛んとは到底いえない。

 だいたいウニタ書店は経営難で、左翼界隈は「ウニタでどんどん買おう」略して「ウニどん」なる支援活動したが潰れちゃったのだ。そもそも売れないから一般書店に置いてもらえないので専門店があった。

 それに弱小零細ばかりの左翼系出版社は同人誌みたいに販売促進会を共催して、似た者同士が集まって売買していたから「左翼コミケ」と揶揄われ、しかもマンガアニメより遥かに小規模だったのだ。


ree

 ここで一つ推測ができる。

 ノンポリ以外は総て共産党で三島由紀夫は赤軍派だと言っていた人が同級生にいるけど、そう思い込んだうえ、デタラメでも全く気にしてなかった。そういう知性と性格の人がいるのは世の常である。戦時中の日本軍を告発した野間宏の小説『真空地帯』では、兵士が所持する『社会契約論』の文庫本を無学な上官が「社会主義の本だろう」と言い大卒の士官に見せたら違うと指摘される場面が(映画化でも)あったが、こんなこと旧軍では普通のことだったそうで、戦前の警察は自然科学の「昆虫の社会」も社会主義と勘違いして取締まろうとした。

 これとおなじ錯覚ではないか。


 また、田舎だと政治経済でなくても小難しいことを考えたり言ったりするのは「アカ」で一括りである。

 ビートたけしが言っていたけど、彼の母親は子供に勉強しろと熱心だったが、小説を読むとアカになると言っていたそうで、これは啓発・啓蒙につながることは全部そうだという意味だ。

 その意味では演劇だって同じだ。ドラマの語源はギリシャ語だが演劇とは古代ギリシャにおいて啓蒙のためにあった。だから、伝統的に演劇界には左翼が多い。そこを、演劇界では少数派の保守だと自称する唐沢俊一という人は、取り違えたのだろう。


 しかし、この点で奇妙なのは前原誠司である。

 劇作家の唐沢俊一と違って、前原誠司は国会議員をやっていて、京大で政治学を専攻したというのに、政治学の古典であるマックス-ウエーバーの著書を「共産党の本」なので読んだら悪い影響を受けて当たり前だと言った。こんな国会議員もいるくらいだから、劇作家が共産主義を賛美する本ばかりだと妄想しても不思議ではない。


コメント


  • twitter

©2020 by 井上靜。Wix.com で作成されました。

bottom of page