- 井上靜

- 6月10日
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更新日:6月10日
前に、国会で山本太郎議員が石破茂首相に迫った。
これを野党支持者が問題にしていた。あの時、被災地に自衛隊を派遣するべきだと山本議員は食い下がったけれど、それに対する石破首相の方か正しかったからだ。
ところが、このやり取りの動画から石破首相の答弁を削除して、いかに山本議員が被災地のため熱心に政府の怠慢を追及しているか、という話に作り変えてSNS投稿した人がいた。しかし動画サイトにはそんな加工をしてないものが投稿されていて、それを見れば山本議員が間違っていて石破首相の方が正しくて常識的だという指摘がされているのだ。
しかし、その「ノーカット版」を見る前から、山本議員の発想が危険だと感じた。
なにも解らない人は「厳しく政府を追及する我らが山本太郎」というように早とちりする。ただ、トーンとかボルテージが高いというだけで。つまり雰囲気に飲まれてしまっているのだ。そうなる人がいることを意識した山本議員のパフォーマンスだったのだろう。
とにかく「自衛隊を出せ」が、いかに危険か。これは昔から言われていた。それで慎重になる革新自治体の首長だと、災害の時に自衛隊の派遣要請をしないから困ると言って、保守派が革新系を攻撃してきたものだった。その時代を山本太郎の世代はリアルタイムで知らない。
あの時、国会の答弁で石破首相は指摘していた。
まず被災地の自治体から首長の名で要請があること。それが被災地では出来ないほど混乱した状況であれば中央の政府が動くことになっている。この場合は被災地の知事から要請が無かった。また、自衛隊の方で、出動の要件を満たしていないとして拒否されこともある。実際に、土砂崩れなどの後始末は民間の業者に依頼して対応することが可能だということで、実際にそうしていた。
なにより、災害などで自衛隊を出す三要件「緊急性」「公共性」「非代替性」の一つでも欠けてはいけない。逼迫してなくて、私的な利益につながり、他に頼んでも出来る、ということが一つでもあれば自衛隊を出すことはできない。自衛隊は実力行使の機関として最大であるから、要件を満たして適正な手続きを取ることが重要である。
これは昔から言われてきた常識である。
だから石破首相が言う「実力行使の機関」すなわち「暴力装置」(マックスウエーバー著『職業としての政治』の表現)である自衛隊を出動させるなら、いい加減にしてはならない。
もしも、それがないがしろにされたら、ということで半村良が『軍靴の響き』という怖い小説を書いて話題になっていた。革新自治体がやむを得ず災害支援を自衛隊に要請したら、そこへつけこんで自衛隊が叛乱を起こして日本は軍事政権が成立し、かつてのチリや韓国と同じことになる。この小説を、かわぐちかいじが漫画にしていた。
この体験が、昔のこととはいえ韓国にはあるから、つい先だって大統領が身勝手から戒厳令を発したことで国民が猛反発し、大統領は責任を追及されたのだ。

こういうことを踏まえて石破首相は国会答弁していた。
それを理解できないことを露呈させたのが山本太郎議員の国会質問であった。タレントあがりだから派手に騒ぐパフォーマンスも一切が悪いことにはならないが、なんでもいいということにはならない。
もちろん、岸田前首相の災害対応がひどすぎたことと、山本議員も言っていたとおり内閣が出来たら仕事をするより選挙という石破首相のやり方は、どちらも非難されるべきだが、政党の代表者である山本太郎議員が、災害対策と自衛隊の起用で基本が解ってないのは結構な深刻さである。
これが維新や国民なら確信犯だが、れいわ代表者がこれでは、ただの無知に基づくパフォーマンスでしかなく、空虚なだけでなく危険でさえある。


