- 井上靜

- 2022年5月27日
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ショスタコーヴィチの交響曲第7番『レニングラード』は、ドイツ軍に包囲された街に当時いたショスタコーヴィチが、その中で書いていたらしい。
その戦争を表現する第一楽章の反復音型は、この演奏をラジオで聴いたバルトークが彼の最も有名な曲『管弦楽のための協奏曲』で茶化した引用をしていたことも知られている。
また、この部分は『メリーウィドー』に似ているので意識したという「定説」があるけれど、似ているとは思えない。むしろチャイコフスキーの交響曲第5番の方に似ていると感じる。
それに、『レニングラード交響曲』は戦勝を讃えているが『メリーウィドー』の歌詞からすると国の呪縛から逃れたいという隠れたメッセージだ、と言う人がいる。しかし、国がなければ戦争もないという『イマジン』のような考えをショスタコーヴィチがしていただろうか疑問だ。

とにかく、これによって後にショスタコーヴィチは対独戦の映画で音楽を担当するが、仕方なくやっていたらしいと言われる。
このソビエト映画はスターリンとヒットラーが戦闘の指令を出すのを詰将棋のように描いていて、攻防戦を面白くしているけれど実際の戦争をこんなふうに描いていいのかと言う人もいた。
よく戦争をテーマに書く小説家の井上光晴は、かつて日本共産党員だった時、映画館で一緒に観た党員たちが、ナチスをやっつけるのを「いいぞ、いいぞ」という感じで喜んでいたけれど、自分は乗れなかったことを書いていた。
ショスタコーヴィチの交響曲第5番は『戦艦ポチョムキン』で流れた。
最初の場面、嵐で荒れた海の映像に被さる交響曲の冒頭が、まるで映画のために作曲されたオリジナルサウンドトラックのように合っていると言われた。
それからずっと後、『宇宙からのメッセージ』という『南総里見八犬伝』を基にした日本のSF映画が、『2001年宇宙の旅』みたいにクラシック音楽を流そうということで、ショスタコーヴィチの交響曲第5番の第4楽章をアレンジした曲を8人の勇者たちのテーマ曲として流していた。このことはプログラムに明記してあったが、読んでない人の中にはパクリだと思った人がいて、その一人が武満徹だったらしい。映画を観て音楽が似すぎていると言ったとか。
『宇宙からのメッセージ』は石ノ森章太郎がデザインに関与し、深作欣二が監督した。
深作欣二監督は、その前に『ガンマ3号宇宙大作戦』というSF映画を撮っている。『ムーミン』のニョロニョロのような性質で姿は不気味な生物が宇宙ステーションの内部で増殖して暴れる話だ。『宇宙からのメッセージ』の次は『復活の日』で、深作欣二監督のSF三部作と言われる。どれも外国人の俳優が出演する輸出を意識したSF映画である。
しかし深作欣二監督といえば時代劇とヤクザ映画である。
ショスタコーヴィチの交響曲第4番と『仁義なき戦い』の音楽が似ている。
これは作曲しているさい意識していたとしか思えない。これについてショスタコーヴィチが好きな人に訊いてみた。その人は『仁義なき戦い』を観てなかったので、津島利章が作曲した『仁義なき戦い』の音楽を聴いてみたところ、たしかによく似た感じがすると言っていた。
『仁義なき戦い』は深作欣二監督の代表作であり、その音楽がショスタコーヴィチの交響曲第4番と酷似していて、そのあと撮ったSF映画の音楽はショスタコーヴィチの交響曲第5番ということである。


