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​炬火 Die Fackel 

  • 執筆者の写真: 井上靜
    井上靜
  • 2024年6月30日
  • 読了時間: 2分

 ドビュッシー作曲ベルガマスク組曲の『月の光』をFMで放送していた。

 バイオリンのコンサート中継だった。もともと用意してあるのにサービスのようにするアンコール曲の後、まだ拍手が鳴り止まないので、ほんとうにその場でもう一曲と伴奏のピアノが演奏したのだった。


 このピアノ曲は、『ウルトラマンエース』か『ウルトラマンタロウ』で流れたことがある。

 もちろん「ウルトラシリーズ」に詳しい人には周知のとおり南夕子の話。内容とひっかけているのだが、これを思いついたのは監督がもともと好きな曲だったからだと、山際永三監督に直接きいた。夕子がピアノを弾くのはゲスト出演した『タロウ』の方だった。



 大変な難曲ではないが陳腐でもないしロマンティックである。

 それでドビュッシーの『月の光』を演奏すると箔が付くような気がするから、女性など好印象になる。そこで練習する人たちもいる。

 それで、かつて知り合いの女子高生(17)が興味を持っているので教えたことがある。「夕子」と言っても女の子にウルトラマンだと多くの場合は例に出すのが不向きだし、世代的にも解らないだろう。また自分が小さい頃は、よく中学生・高校生のお兄さんたちが「夕子」「夕子」と言っている意味が不明で、あとからから何度か再放送されたさい小さい頃には解らなかったことが解かるようになった。

 そこで、深田恭子なら知っていたので、あんなふうになるとカッコイイよ、と言った。ところが最初はよかったけれど、曲が進むにつれてだんだんと複雑になるから、「ムズ(難)い」とか「ムリ」とか言い出した。



 でも、印象的な開始だけは繰り返したので暗譜で弾ける。

 それを学校の音楽室にあるピアノで弾いたそうだ。授業のあと音楽室を出る前ちょっとやってみただけだけど、同じ組の人たちと音楽の教師から感心された。良かったじゃないか、と。だから続きを覚えよう、と言った。しかし、この時に、前から気になっていたけれど自信が無くて「コク(告)れ」ないでいる男子もいて聴いていたのに、ちっとも関心を持ってもらえなかった。見向きもされなかったそうだ。

 なんとも「それは残念だったね」ただ「彼は音楽に無関心だったかもね」と言ったら、だから「ガッカリなのでもうどうでもいい」と練習しなかったのだった。

  • 執筆者の写真: 井上靜
    井上靜
  • 2024年5月12日
  • 読了時間: 2分

 ボブマーレイの映画が公開。

 高校の担任教師は演歌が好きで「♪他人を押し退けて生きてゆくより~安い酒に酔いたいね~新宿港町~」なんてのが庶民の心だと言う奴隷根性の持主だったから、レゲエの「♪Get Up, Stand Up, stand up for your right ~don't give up the fight」に共感していると敵視した。



 尹伊桑のこともあった。

 韓国の軍事政権に殺されそうになったさい国際的な騒動になって助かった。有名になりたい病というのではなく、知名度のため有利になり生命の危機で差が出ることもある。

 そう言っているのに、この担任教師は話をちゃんと聞いておらず「自己顕示欲が強いんだな」と否定的に言って侮辱した。

 あと尹伊桑のことは、後に大学で韓国人留学生が話題に乗ってきたが、こちらは音楽の話をしていたのに、彼は政治の話をはじめた。


 なんであれ田舎の教師だから知らなかったのだろう。

 わが校に赴任する前に勤務していた学校は、これが現代なのかというほど僻地だったと聞いた。

 『ハイジ』という映画で、フランクフルトで読み書きを習って帰ったハイジは、地元の学校に行って授業には難なく付いていけるようになっていたけれど、物語に魅せられて読み書きを熱心に勉強したから、教室で将来の職業について訊かれて「小説家になりたい」と答えたところ、これは教室で独りだけ変わったことを言ったことになり、教師は不可解そうにするし他の子供たちは笑いだす。

 なんでそんな反応なのか疑問だったハイジは、その後、フランクフルトからクララを連れて来た祖母に話したところ「おそらく田舎の人たちは知らないのだろう」と言われた。

 きっと、世界中が同じことだろう。


  • 執筆者の写真: 井上靜
    井上靜
  • 2024年4月17日
  • 読了時間: 2分

 FM放送で、團伊玖磨の生誕百年という番組をやっていた。

 もともと團伊玖磨の作った曲は好きではなかった。木下順二の『夕鶴』をオペラ化したものが代表作といわれるが、他にも交響曲とか映画音楽とか、ラジオ体操第二とか、何を聴いても感動しなかった。また童謡の代表作は『クレヨンしんちゃん』のネタとして認知しているだけである。

 ということで、改めて放送で聴いても感想は同じ。これは趣味の問題である。



 音楽に関心が持てないので、あとは食道楽とニコチン依存症の人という印象だけ。

 團伊玖磨の食道楽については、『美味しんぼ』の最初の話に食通の作曲家が登場して、これは明らかに團伊玖磨がモデルである。やはり嫌味な食通として知られる演芸評論家の山本益弘をモデルにした人と一緒にグルメを語っているのだから、明らかに皮肉である。

 よく『美味しんぼ』には、喫煙で嗅覚が麻痺して味が解らなくなるという挿話があるけれど、食通なのに煙草を吸っているなんてのはガイドブックに頼り自分の味覚で判断できないということで、作者による自称グルメへの批判である。


 團伊玖磨はエッセイ『パイプのけむり』も知られている。

 本人は愛煙家でもあると自称しているのだろうが、これもグルメと同じで、本当の愛煙家はマナーの悪い人に苦言を呈して、健康や火災などの被害に厳しいものであるが、それを團伊玖磨は「ファシズム」と誹謗していた。

 おそらく「禁煙ファシズム」という非常識な言葉を最初に公言したのは團伊玖磨ではないか。


 ということで、何一つ良いことが無い團伊玖磨であった。

 


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