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​炬火 Die Fackel 

  • 執筆者の写真: 井上靜
    井上靜
  • 2021年12月9日
  • 読了時間: 2分

 生活支援のためにと商品券を配ることには問題がある。

 もともとは、例の地域振興券のことがあった。現金ではなく商品券にして、それに有効期限をつければ、期限内に使うしかないから経済が回るというわけだった。これを公明党が言い出した。

 しかし、配布された商品券を使って、そのぶん浮いた現金を貯め込めば同じことだから、景気対策になっていないという批判があって、自民党も乗り気でなかった。それでも公明党が熱心だったのは、低額所得者に券を配布することで福祉対策にはなるからであった。なんてことはない、そうすることで公明党としては人気取りになると考えたらしい。庶民のための福祉ということなら反対しにくいから、自民党は話に乗った。

 そんな経緯だった。


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 それより少しは意義がありそうな小さい規模の店だけで使える商品券。

 たしか、今も一部の地域でやっているはずだ。しかし、どこまで効果があるのか。個人商店をやっている人たちに訊いても、あまり、ありがたくないと言う。

 だいたい、現金にすれば手間暇が無用なのに、それを商品券にすれば余計な費用がかかる。これを請け負う業者が儲かるということで、これは一種の「中抜き」である。大阪では吉村洋文知事の名義で配布していて、これでは公費での選挙宣伝だと批判されたが、そんなのに引っかかる人が多いからやるのだ。


 あと、無駄遣い防止という目的。

 これはひどい話で、パチンコには使えないとか、そういうことだ。まるで小学生に、現金で小遣いやってゲーセンで使えないように図書券や文具券をあげるというのと同じ発想だから、大人を子ども扱いする人をバカにした話である。

 そういえば、前に話題としたとおり、今年は久しぶりに図書カードをもらった。商品パッケージ不良の御詫びということで、これは送料が安くつくからだろう。そういう時だけにしてほしいものだ。

 
 
 
  • 執筆者の写真: 井上靜
    井上靜
  • 2021年11月30日
  • 読了時間: 2分

 取引先から電話がかかってきた。

 これは、これまでの投資の担当者が異動になり、新しい担当者が着任したという自己紹介だった。そして、このところコロナウイルスの危惧から投資相談などが中断していたけれど、「おちついてきた」から今度また面談しないかと言う。なにが「おちついてきた」のだろうかと可笑しかった。


 それはともかく「投資アドバイザー」が来るというので断った。

 そもそも、そんなのは売れ残り銘柄を客に売りつける役である。前に懲り懲りしてもいる。もともと警戒はしていたが、あまりにひどいので厄介払いしたのだった。しかし、当時の担当者は、その人が来るので相談できるので是非にと言う。そんなの話にならないじゃないかと言った。こちらで買いたいという株や債権などに対して「ダメ、ダメ」と言って拒絶したうえ、これが良いと薦める銘柄がことごとくダメなのだ。それで、お前はイラナイと店で怒って言ったら慌てていた。


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 そして別の人が来た。

 その人は、前の人よりずっと若い人だったが、前の人の時の記録を見て、いくらなんでもひどすぎると言った。前の人がダメだと言った銘柄は利益があがっていて、薦めた銘柄は損ばかり。これで他の銘柄から得ていた利益がほとんど消えてしまっていた。

 なんで、こんなことになったのか。グラフを見ても、これから下がるという時期に、その銘柄を奨めていた。これでは故意に損をさせようとしていたとしか思えない。そんなことはしないと店の担当者は言うが、ではこのチャートは何なのかという話になった。


 前の人は只のバカだった可能性もある。

 それにしても、なんか変ではないかと途中で指摘しても、店の担当者は理解できなかった。よく窓口の担当者の女性は、愛嬌をふりまき事務手続きするだけで、具体的なことは解らない。それでいかがわしい投資アドバイザーを経済の専門家だと信じてしまっているようだった。最初は悪意かと疑ったが、何も知らないだけなのだ。

 それで、相談など一切せずに自分で判断して購入することにしているから、コロナウイルスがどうなっているかとは無関係に、電話とネットで売買することにしていると伝えたのだった。

 

 
 
 

更新日:2021年8月6日

 かつて勤務していた会社で、倉庫の作業をしていた韓国人留学生が伝票を間違えてしまい、違う送付先に届けられて問題になってしまったことがあった。

 この留学生とは仲良しだった。彼は日本語がよくできるから働いていたけれど、違うが似ている地名に気がつかなかったのだった。


 しかし、問題は誤発送それ自体ではなかった。

 それが届いた店の主は、荷物の箱を開けてから注文していない商品だと気づき、納品書を読んで別の店と間違えて送られたと知ったわけだが、このさい同じ商品を自分の店で注文した時とは大違いの安い仕入れ値だったので驚いてしまい、怒って文句を言って来たのだった。

 なぜ違う値段なのかというと、本来なら届くべきだった店は同じ会社が複数の店を経営していて、それら総ての店が発注した合計を元締めの会社が一括して買った形にしているから、大量に購入する見返りに値引きしているというわけだ。


 それで、誤発送を詫びたうえで値引きのわけも説明したが、その店の主は納得しない。

 この時、入社したばかりの二十代前半の男性が「たくさん買ってくれる代わりに値引きするなんて当たり前だから、説明するまでもないでしょう」と呆れて言った。そうだけど、説明するまでもないことを説明して、しかも理解してもらえないから困るのだ。いくらなんでも値引き率が大きすぎると言う。

 これは購入が多いどころか桁違いだから、購入が多ければ値引きの率も上がる「累進リベート」である。この数値は、会社の買い付け人とかバイヤーとか言われる専門の担当者が交渉するから、上手くまとまれば更に大きくなる。これに縁が無い小規模な個人商店のオヤジは知らないうえ、数字を示して説明しても理解できないのだ。


 この時、中学の同級生の父親が店の経営を失敗したことを思い出した。

 彼の父親は、地元の商店街で焼肉の食べ放題を謳った店を開業したが、最初は話題になって客が来たものの、すぐに破綻してしまった。

 だいたい、食べ放題の店はチェーン店ばかりで、先述したようなやり方で材料費を安くしている。これと同じことを個人経営の一店だけでは不可能である。

 また、開業資金だけではなく運転資金も充分でなければ、始めた当初は赤字だから、それを持ち堪えることができない。なのに「脱サラ」で商売を始める人には余裕がなく、とりあえず開店さえできれば「見切り発車」して後は何とかなるという漠然とした感覚でいる。だから開いて一年と持たない店が圧倒的多数なのだ。


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 その店を破綻させた主な客とは、息子が通う中学校の同級生たちだった。

 ただでさえ中学生の男子は食欲旺盛だが、そのうえ部活やっている連中で、特に大柄な柔道部の生徒たちが、連日のように押しかけては食べ放題した。あっという間に冷蔵庫は空になる。売り切れのうえ支払いは少しだけの定額。これに店の主が焦って醜態をさらしていた様子を、柔道部の連中は学校で笑いながら話していた。

 こうして息子は恥ずかしい思いをした。また親の商売の破綻により進学するつもりだった私立高校には入れなくなり、受かっていたのを辞退して、二次募集していた公立高校に進学した。偏差値的には非常に割が悪い進学である。それで二重に恥ずかしい思いをしたというより無様とか惨めとか言うべきほどの姿だった。


 あの時は、彼の父さん何て愚かなのだろうと思ったが、後から勤務した会社の誤発送をきっかけにして、そんな人はザラにいると知ったのだった。

 
 
 
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