- 井上靜

- 2021年11月16日
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対コロナウイルスの新薬は、新薬ゆえの心配が出ている。
これは当たり前のことだ。もともと新薬は長い期間をかけて確認しなければならないものなのに、緊急事態だから拙速になってしまった。まだ解らないことがある。だから心配しないでいる方が非常識である。
そして、効果や副作用への疑問が生じる事態も発生しているが、そもそも薬にはそうした心配が付きものである。
ところが、コロナウイルス禍の深刻さから不安が広がっていため、もともと薬に必ずある心配を否定しようとして荒唐無稽な話が流布されている。

そこで特にひどいのが「陰謀論」「陰謀説」を持ち出すデタラメである。
例えば、戦争で悲惨な体験をした人が、そこから軍隊なんて国民を守ってはいない現実を指摘することは、あくまで実体験に基づいた国と権力への不信であるから、陰謀論・陰謀説ではない。戦争の原因について、おそらく軍産複合体が大儲けしようとしたから、などの勘繰りをすることを陰謀論・陰謀説というのだ。
この常識を踏まえていれば、次のようなデタラメにも、すぐ気づくはずだ。
医療ミス被害に遭う体験をした人には、自分の子供に医療を受けさせるさい神経質になる傾向は当然だ。
その一部には、子供に予防接種を受けさせなかった人もいるけれど、これに「陰謀論者」の非難をするのでは、言葉と内容が合っていない。簡単に解ることだ。これは否定するつもりで逆効果になる。
こんなことするということは、昔からの陰謀説が、ここでも適用できるのではないか、などと思われてしまう。だいたい製薬会社は大企業で、しかも戦争で大儲けして大きくなった会社が世界中に(特にドイツと日本)ある現実から、利権を守るため薬の被害を隠蔽しようとして、金の力でマスコミに世論操作を仕組んでいるのではないか、と。まったく逆効果にしかならない。
そんな話題のなかで、母親が被害に遭って医療不信に陥り娘に予防接種をさせなかったという女性の話が紹介されていたけれど、これも同じことである。
まるで、スチーブン-キングの小説『キャリー』みたいに母親を悪者にして語っていたが、そのキャリーのママだって、夫が職場で事故死したのは信仰している宗教の戒律を破った罰だと信じているため娘にも戒律を押し付けている設定であるから、狂信的ではあるが陰謀とは関係ない。
ついでに、同じ作者の『デッドゾーン』には、聖書のセールスマンをしている男が政治家に転じる挿話があって、ここで彼は聖書がなかなか売れないけれど右翼的な宗教団体の「ユダヤ人と共産主義者の陰謀」という冊子はよく売れたことから、こうした扇動は大衆に受けると気付いて議員選挙に立候補して当選する。
こうした陰謀論は、大企業が利権のためにする陰謀に比べると非現実的であり荒唐無稽っぽいくらいだが、真偽の判断が正反対になる人も多いのだ。
こうしてみると問題は具体的な内容である。
それをレッテル貼り攻撃に利用している輩がいて、その場合、言葉と内容が合致していないのが常なのだ。要注意である。


