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​炬火 Die Fackel 

 田島陽子もと参議院議員がネット番組で発言した。

 「『妻』という呼ばれ方でいいのか?」というテーマで「妻って変な言葉だよね。刺身の“ツマ”で、何かの端っこみたい」と指摘したうえで、「人間の旦那の相手を妻と呼ぶのは失礼、腹立たしい」「これは法律で変えていかないといけない」などと語った。


 これにケチをつけたのがタレントの猪狩ともか。

 この人はアイドルユニット「仮面女子」のメンバーで車いすユーザーと紹介されている。彼女は自身のバツ(エックスとも言う旧ツイッター)で「いい加減こういう言葉狩りやめませんか?普通に『妻』で良くないですか?」と投稿し、これが一部で「反論」と報じられた。


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 言葉ということでは、法律を改訂するべきだと元議員は言った。

 これは当たり前のことである。法律では言葉を正確に使用しなければならない。そして現代の日本の法制度では、婚姻について両性の平等を謳っている。ところが今の婚姻届は記入欄に「夫」「妻」と記載されていて、片方を添え物とする表現になっている。

 これだから、「失礼」「腹立たしい」としたうえで、法律を変えないといけないという指摘である。俗に軽く発した言葉に細かいことで非難を浴びせることを「言葉狩り」と言うことがあるけれど、それとは明らかに違う。


 つまり猪狩は田島の発言の趣旨を正確に捉えていない。

 だから、言葉を正しくしないと法律的に問題であるという指摘に対し、「普通」に従来のままでいいと的外れなケチをつけたのだ。

 これでは真面目な問題提起に対する「真面目狩り」「問題提起狩り」である。こういうことをする人は他にもいて、それは常に通俗的で時代遅れな「普通」を掲げて改善を妨げるから、とても迷惑なのだ。芸能人の無知だけでは済まされない。


 
 
 
  • 執筆者の写真: 井上靜
    井上靜
  • 10月21日
  • 読了時間: 3分

 箕輪厚介という人は幻冬舎の編集者だそうだ。

 この人のSNS投稿が顰蹙を買っていた。彼がコンビニ店の支払いでSuicaを使ったら残高不足であったためチャージして再び支払おうとしたら、もう現金しか駄目と言われて、強く要求したら店員たちも強く出たため多勢に無勢のようになって諦めたそうだが、そこで彼は、この店員たちが全員が中東系の外国人だったから、治安が悪くなっていると言う。

 さらに、そんな店員は金を抜いているだろうという匿名の反応があると、これに彼は同調していた。


 これは店員が外国人であることとは関係の無いことだ。

 だから、正当な根拠もなく排外主義を煽ったことになる。すると彼は、自分は排外主義者じゃないけれど、排外主義反対とか言う左翼的な人から過剰な攻撃を受けたという投稿をした。

 そんなこと言っても、そもそも彼がSuicaにチャージしておかなかったのが原因であるし、不足分をすぐに現金で払えば早く済むのに押し問答みたいなことしていたら他の客に迷惑である。後に支払いを待つ人がいればなおさらである。また、Suicaは複数枚を同時に使えない仕組みだから、チャージして差額を払うことができない。自分で使い方を間違えておいて文句を言うな、と言われたらそれは左翼的とか、対応が悪いと非難したうえ店員が外国人だから治安が悪化していると飛躍こじつけても自分は排外主義者じゃないとか、言うことがかなり滑稽である。

 こうした彼の発言は、日本の印象を悪くしてしまうと右翼団体からも批判されていた。


 おそらく彼はポイントにこだわったのだろう。

 そう考えれは、彼の行動は理解できる。残高不足していたなら差額を現金で支払えば簡単である。なのに、持っている現金をSuicaにチャージしてまた払おうとする手間をかけるのだから、全額をポイントの対象としたかったのだろう。

 だが、コンビニ店の買い物で付くポイントなんて大したことない。まして残高不足の分である。そんなものにこだわっていてはセコイし、チャージしてまた支払いの手間および店員との押し問答の労力と時間など金銭に換算すると、ちっぽけなポイントではまるで吊り合わない。

 ということは、「ポイ活」に執着する余りの行動だったのかもしれない。


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 彼が働く幻冬舎はケチなのだろうか。

 だからちっぽけなポイントにこだわったのだろうか。排外主義は貧しい人が外国人に八つ当たりするものである。今それが流行っているのは、日本が貧しくなったからだ。長きにわたり出版業界は不景気である。それにより、儲かってない、給料が安い、と世間から印象を持たれる。それは世間体が良くない。

 実際には、大手出版社が軒並み赤字決算なのに幻冬舎は黒字である。あの見城社長は、払う給料をもっと多くしてあげるべきだ。ポイ活しなくていいように。



 


 
 
 
  • 執筆者の写真: 井上靜
    井上靜
  • 9月28日
  • 読了時間: 4分

更新日:11月26日

 三重県松坂市で59歳の女性が詐欺の疑いで逮捕されたという。

 これは、収入を申告せずに生活保護を受けたからで、それを報じた地元の有力紙(三重県松坂市に限ると全国紙より影響力があるともいわれる)『夕刊三重新聞』の記事が基になっている。

 これを主婦むけサイトマガジン『シュフーズ』が受け売りのうえ不正な脚色をして流布したのだ。


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 まず、不正受給の総額が約289万円になるので「金額が大きい」と注目を集めているという大見出しで、これがネット上でブラウザに意図せずとも表示されるようになっていたことだ。これを流布させることに不純な作為を感じる。

 しかも『シュフーズ』の記事になると、元の『夕刊三重新聞』の記事と違って、不正受給の総額が約289万円に「のぼる」と記述されている。こんな記述をしていたら「金額が大きい」と受け止めるおっちょこちょいな人もいるだろう。しかも、その記事中で「大きい」と言っているとされるのは、あくまで匿名ネット民である。



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 正しく読めば、同記事は「2021年4月から2024年3月までの約3年間」に合計「37回」の金額だと説明してもいる。つまり年に約96万円、月に約8万円である。これが3年と1ヶ月分。小学生にも出来る簡単な割り算をすれば、地方で最低の生活費として生活扶助の基準になっている額である。この明細からすると289万円は「金額が大きい」とは到底いえない。単に、実は収入があるということに市役所が3年ほど気づかなかっただけである。

 それを、高額な不正受給をした人がいると報じているのだから、『シュフーズ』のしたことは虚偽の報道と言ってもいいだろう。

 

 しかも、その虚報によって59歳の女性が逮捕されたことを当然視させている。

 この程度のことなら、不正になることを当人に指摘したうえで、生活保護を打ち切り、既に渡した3年一か月分の返還を求めれば済むことである。それだけでは「だめでもともと」と不正な申請を役所にして受け取り、バレたら返せばいい、ということになってしまうとの危惧があるなら、返還にさいして利子を付けることだ。これは他のことでも公的機関がやっている。役所の単純なミスが原因であっても、市民に返還させる時は利息をつけている。それを払わなければ差し押さえする。これは税金などで情け容赦なくやっていることだ。

 ところが松坂市は警察沙汰にした。


 市が少額の問題で市民を警察に告訴するだけでも不適切である。

 しかも、その女性は警察の取り調べに対して「だましたつもりはありません」と疑いを否定しているとも記事は説明している。そこで警察は詳しい経緯を調べているということだから、それがはっきりするまでマスコミに発表することも不適切である。

 言うまでもなく、他の刑事案件でも、警察が安易に発表したり、それをマスコミが無批判に垂れ流し被疑者の言い分をろくに取り上げない報道をしたり、などということは不公正であり人権侵害になる。

 こんなことで市役所が警察に訴えていいのか、警察は追及するにしても逮捕までする必要があるのか、という批判的な記事ならともかく、そうではなくこの記事は、警察の一方的な発表を垂れ流したものだ。いちおう逮捕された人は匿名であるが。

 それを『シュフーズ』は、逮捕された人は悪質であると印象操作する虚報に仕立てたのである。

  

 生活保護の不正で昔から問題なのは暴力団関係者である。

 暴力団員が生活困窮者を装ったり、ほんとうの生活困窮者を利用したり、そうすることで生活扶助費を不正に受け取ることは、昔から生活保護制度の不正の代表格であった。だから警察沙汰になるなら、暴力団がらみであるのが普通である。

 では、この件はどうなのか。それこそ警察が調べるべきことで、だから逮捕までして追及している、ということなら理解できることだ。しかし、そうでなかったら、こんなことで警察が出るのも、それ以前に市役所が市民を告訴するのも、やってはならないことだ。


 ところが『シュフーズ』は、多額で悪質だから逮捕という脚色をして流布した。

 しかも『シュフーズ』の記事でさえ、ちゃんと読めば違うことが判る御粗末。

 その女性に悪意が無いとしても落ち度はあった可能性ならある。けれど、暴力団がらみであるかは警察が何も言ってないから不明であるし、それなのに記事は空々しい印象操作をしているのだから、その女性より『シュフーズ』のほうがよほど悪質である。

 こういう低劣で煽情的なサイト情報が、差別や弱者いじめをはびこらせるのだ。ほんとうに要注意である。

 
 
 
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