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​炬火 Die Fackel 

  • 執筆者の写真: 井上靜
    井上靜
  • 2021年9月8日
  • 読了時間: 2分

 FMでシューベルトの歌曲集『冬の旅』を全曲放送しているのを聴いた。

 このうちもっとも有名なのは『リンデンバウム=菩提樹』であるが、この歌詞は木の幹に愛の言葉を刻んだというもので、しかし仏教では釈迦が菩提樹の下で瞑想しているうちに悟りを開いたという話から、よく日本でも寺院に菩提樹が植えられている。


 この菩提樹の実には性欲を抑制する成分があると言われている。

 また、日本初の70ミリフィルムによるスペクタクル映画『釈迦』(1961)では、釈迦が菩提樹の下で瞑想していると、エロイ恰好した女性(演じていたのは、当時の有名なストリッパーだったらしい)が官能的な踊りをして見せ修行の邪魔をするけれど、それを意思の力で払い退ける。

 だから菩提樹と釈迦の悟りは関係があるのではないかと言われている。


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 それはともかく、歌の『菩提樹』を聴くと、トーマス-マンの小説『魔の山』を思い出す人もいるだろう。

 またアニメ映画『風立ちぬ』で、主人公の妻が結核にかかり療養のため「山に行く」と言っていたり、ゾルゲふうのドイツ人スパイが「カストルプ」という名だったり、明らかに『魔の山』を意識している。

 これより前の同監督による『となりのトトロ』で「七国山病院」に入院しているお母さんは症状から結核らしく、モデルは「八国山」だろう。あの界隈には昔から結核療養所があった。


 また、同監督が参加した『パンダコパンダ』の舞台は秋津と画面に出てくる。

 この秋津から八国山さらに清瀬あたりは、結核療養所のため地域としては大きな病院があったものだけれど、各分野の専門医がいなくて、しかも知ったかぶりするから、大きい病院というだけで行くと酷い目に遭う。

 それで、近くに防衛医大が出来ると、まだマシに思えてしまった。実際には国立病院で最悪と言われていたのに。


 
 
 
  • 執筆者の写真: 井上靜
    井上靜
  • 2021年9月3日
  • 読了時間: 2分

 リチャード-ドナー監督が死去したという報で、もう90を超える歳だったと改めて知った。

 この人はテレビドラマの名監督だったが、そこから地味だったり低予算だったりの劇場映画を何作か撮って、そのなかの『オーメン』の大ヒットをきっかけに大作『スーパーマン』や派手な『リーサルウェポン』を手掛けていたことで知られる。


 また『グーニーズ』という映画もあった。

 これは「スピルバーグ提供」と謳われていたけれど名義貸しらしい。この映画は監督がリチャード-ドナーに製作がハーベイ-バーンハートで、二人ともカメオ出演しているけれど、これは『オーメン』の監督と製作者だから、大ヒット作とはいえ怖い映画では『グーニーズ』の内容とイメージ的に合わない。それでスピルバーグに依頼して、実際には関与していないけれど、している形にしてもらったということみたいだ。


 『グーニーズ』が公開されたら、これに基づいたビデオゲームが作られた。

 その内容は、映画の劇中に出てくるキャラクターが迷路の中を探索して回るという、よくある形式で、その間、映画の主題歌のメロディーだけが電子音で流れ続ける。映画ではシンディ-ローパーが唄っている。

 このゲームを持っていた。当時の主流といっていいのはMSXパソコンだった。それをワープロが主な目的で買い、ゲームもできるということで、ちょうど売っているのを見た中で面白そうだったから買ったのだった。


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 ゲームソフト『グーニーズ』は、今の画面に比べると単純だったが、それでも映画の雰囲気はよく出ていたから面白くて最後までクリアした。

 それで今思うと、『スーパーマリオ』など、逆にヒットしたゲームを基に映画を作っても面白くならないが、それはゲームのために発揮した創造性ではドラマに膨らませられないということだろう。『スーパーマリオ』の映画は公開当時に半額の日だからと映画館で観た。満員に近かったけれど、半額でない日は客の入りが良くなかったらしい。映画は退屈で、主題歌だけが良かった。


 さらに「東映不思議コメディシリーズ」が、最初は『ロボコン』の人気を意識してロボットが居候するホームコメディだったのが、スピルバーグ監督の『ET』の大ヒットを意識して居候が宇宙生物の『ペットントン』になり高視聴率を記録したけれど、そのあと『おもいっきり探偵団-覇悪怒組』となるのは、きっと『グーニーズ』の影響だったのだろう。

 
 
 
  • 執筆者の写真: 井上靜
    井上靜
  • 2021年8月12日
  • 読了時間: 3分

 前に出版社の事務方をしている人と話していて『宇宙戦艦ヤマト』の新作について訊かれた。

 このさい、出演している声優について話がおよび、そのうち神田沙也加について、その人は「へえ~そんな良い役で出ているのか~」と。それで、まあ『アナ』で名を上げたからだろうと言っておいた。


 1980年に松田聖子がデビューして一躍スターダムに昇ったが、この年は宇宙戦艦ヤマトの劇場版第三作『ヤマトよ永遠に』が公開されている。

 この当時、将来、松田聖子の娘がリメイクされた宇宙戦艦ヤマトに声優として出演すると想像できた人は居なかっただろう。


 製作・総指揮・原作/西崎義展(昭和9年生=昭和一桁世代)の御託。

 1980年公開の三作目『ヤマトよ永遠に』のプログラムにて。


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 「かつて日本人は、外国の人から、黄色い猿とかジャップとかいわれ、あなどられてきました。しかし今は、そんなことはほとんどありません。逆に日本人の勤勉さや、緻密さ、複雑さに、民族としての長所を認め、世界全体がもっと幸せになれるように指導性を発揮して欲しいと要望されています。

 私は、日本人が、このすぐれたところを、もう一度再認識し、それが国際性へつながるようにと心から思います。『宇宙戦艦ヤマト』は、そういう私の強い念願がフィーリングとなって形成された作品だとも言えるのです」


 当時は、こんなことを説くことが出来たのだった。「今は昔」だが。

 まさか、日本が今ここまで衰退・堕落すると想像できた人は、少なくとも日本人には居なかったのではないか。



 ところで、過日、FM放送のオペラ番組でワーグナーの作品をやっていたが、そこでオペラに詳しい音楽評論家の女性が「ワーグナーは苦手」と言っていた。

 どうもワーグナー劇のヒロインは「男性に都合が良い女性」で共感しにくいということだった。権力を志向して戦い荒んだ男性の魂を、女性が自己犠牲によって救済するという図式が、ワーグナー劇では毎度のことである。

 それで、松本零士はクラシック音楽ファンで特にワーグナーが好きだと公言しているから、その影響が『宇宙戦艦ヤマト』にもあって、いつもポスターでは宇宙戦艦ヤマトが征く宇宙空間に救済者としての女性の姿が浮かんでいるし、我らのヒロイン森雪が、デスラー総統の攻撃をかわすため決死の覚悟でコスモクリーナーを作動させるのは「古代くんが死んじゃう」からだ。


 また、ワーグナーファンの祭典バイロイト音楽祭が中止になってしまったのは、コロナウイルス新型肺炎禍のためだが、戦争ではなく伝染病というのが異例である。

 そこでSFアニメしか知らない人は、バイロイト音楽祭と言っても「♪マクロの空を~つらぬいて~」と取り違えるし、ザルツブルク音楽祭というと「♪疾風のように~」と取り違える。

 前に、ウイルスを除去するコスモクリーナーがあればいいな、と言った人がいる。波動砲で吹き飛ばせたら良いのに、とも。「波動砲でコロナを撃て」というセリフがあった。しかしあれは吹きあがった炎だからコロナではなくプロミネンスの間違いだと指摘されていたものだ。電子顕微鏡で見ると日輪のようだからコロナウイルスというので、昔のSFアニメなら「♪胸に輝く~日輪は~正義の印~」である。ここまでくると懐かしすぎて若い人には解らないだろう。

 
 
 
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