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​炬火 Die Fackel 

  • 執筆者の写真: 井上靜
    井上靜
  • 2023年6月25日
  • 読了時間: 2分

 小泉今日子はホラー映画ファンを公言していた。

 彼女がアイドル歌手として最盛期だった当時、ホラー映画が流行していたが、小泉今日子は『エルム街の悪夢』などが気に入っていたそうだ。


 たしかに『エルム街の悪夢』は大好評だった。

 ジョニーデップのデビュー作でもある。あのロバートイングランドが演じる殺人鬼フレディが話題だったが、それに追われる主人公の恋人役であった。悪夢の中で斬り付けられて目が覚めたら本当に傷ついていたと言っても信じてもらえないという場面である。


 またジョージAロメロ監督のゾンビ映画の完結編も公開されていた。

 ところが、それを勝手に別の映画のシリーズみたいに日本の配給会社が邦題をつけていた。サムライミ監督の低予算ヒット出世作『死霊のはらわた』に倣って『死霊のえじき』としていた。映画ファンの間では不評な邦題であった。

 それはともかく、これらホラー映画について取り上げたテレビ番組に、小泉今日子は出ていた。そして『死霊のえじき』の予告編に出て来る冒頭の場面について、小泉今日子がテレビでこう表現したのだった。

 

 「壁から手がクソいっぱい出て来る」


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 たしかにそういう場面で、実に的確な表現であった。

 ただ「女の子が」「アイドルが」「そんな言葉づかいしては駄目だ」などとも言われた。


 最近は社会について発言することで話題の小泉今日子である。

 それも特に社会派とか政治的とかいうことでは無いのに、変に言う人たちがいる。それを当人も奇妙なことであるように言っていた。そこで悪口にされても反って熱が入る性格だという意味のことも言っていた。

 ようするに、何でも率直に語る小泉今日子で、それが彼女の良いところだと、むかしから言われて人気だったのだ。だから今の政治経済についても、醜いことが「クソいっぱい」ということなのだろう。

 ちょっと、そのことを色々なことから思い出したのだった。


 
 
 
  • 執筆者の写真: 井上靜
    井上靜
  • 2023年5月5日
  • 読了時間: 2分

 維新こと大阪ヤクザ党がカジノにこだわっている。

 これで思い出すのは『カリオストロの城』でのルパン三世の冒頭である。アヴァンタイトルで、ルパン三世が相棒と一緒にカジノから大金を盗む。


 この映画の終盤でルパン三世が峰不二子に「お友達になりたいわぁ」と言う。

 ほんらいは「お友だちになろう」だったが、おそらく山田康雄のアドリブだったのだろうと言われる。かつて金鳥の清掃用品のCMで園佳也子が言い、流行語だった。

 これとは別に気になるのは、ルパンは最初の場面で強奪したけど偽札と気づき捨てたはずなのに、最後に偽札の原版を峰不二子がどさくさに紛れて持ち出したと知り媚びるから、整合性を欠いた言動である。クラリス姫と別れて欲求不満からスケベ心が起きたのか、まだ本気で不二子が好きなのか。


 公開当時プログラムで宮崎監督は、貨幣の価値なんて国家権力の威信に過ぎないと説いていた。

 だから発端は偽札の謎だったけれど、アウトローのルパンとしては物語途中から偽札の追及を銭形警部に任せて姫の救出に命懸けとなる。これがディズニーなら城に嫁いで玉の輿ハッピーエンドだが、そういうのが宮崎駿は嫌いで「白雪姫なんてアホ娘」と言っていた。


 最初、相棒の次元大介が「国営カジノの大金庫からかっぱらった」と言っていた。

 ところがそれは偽札だったので、胴元の国を困らせてやることにならない。ルパン三世としては金が欲しいというより義賊になりたかったのだ。だから偽札と気づいてルパン三世は「捨てちまおう」と。


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 つまり自分が偽札を作る側なら良いことになる。それで偽札の原版を持ち出した不二子に「お友達になりたいわぁ」なのだ。


 公営の賭博場で泥棒するのは義賊である。

 だからカジノに拘るだけでも維新は大阪ヤクザ党なのだ。他にもヤクザ気質は色々と発揮しているが。

 
 
 

 ロシアのサイトが対独戦勝記念日を話題にしていた。

 78年前の1945年4月16日、ベルリン攻略作戦が開始され、同年5月8日、ベルリン攻略作戦が終わり、「大祖国戦争」の勝利。


 ドイツをやっつけたのはソビエトが中心だったのに、アメリカは少し手助けした程度なのに戦後のヨーロッパで利権を独占していて、それで日本をやっつけたのはアメリカが中心だったけどソビエトはちょっと介入して領土をかっさらう御返しをした。

 だから、今も領土問題で日本がロシアに何を言おうと、そういう話は日本がアメリカと基地問題など戦後処理を本当に済ませてからだと突っぱねられるわけだ。


 その戦争を描いた『ベルリン陥落』というソビエト映画がある。

 今は公共財(パブリックドメイン)となって動画サイトで簡単に観ることができる。ショスタコーヴィチの音楽が話題で、これはもちろんドイツの攻撃では『交響曲第7番レニングラード』の音型が再現されるが、他は叙情的な音楽が多く、それもそのはずで映画の筋はメロドラマであるから。

 このドラマで主人公の男性は見るからに田舎の普通の男で、最初、恋人のナターシャが音楽会でイケメンのピアニストの演奏に感動している様子に、自分は見た目もパッとしないし芸も無いと凹むが、そんなことは関係ないとナターシャが言うので感動する。

 そこへドイツ軍が猛攻撃して来る。彼は軍隊に入り勇敢に戦い、ナターシャも工場で武器弾薬などの生産に従事する。


 スターリンとルーズベルトとチャーチルが話し合う場面がある。

 ここではチャーチルがスターリンの話に賛同してばかりだから引き立て役っぽい。まあ、アメリカ映画ではルーズベルトが美化され、イギリス映画ではチャーチルが美化されているから、これは当たり前なのだろう。

 スターリンとルーズベルトは後から色々と言われたし、チャーチルなんて悪質な帝国主義者だとアメリカ人も指摘する人がいるけれど。

 

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 最後はベルリン陥落で、捕らえられた人たちが解放される。

 ここに、工場から拉致された作業員たちがいて、その中にナターシャも。兵士として戦ってきた恋人と感動の再会―ここで終われば戦記とメロドラマとしては良かったのだが、そこへスターリンが飛行機で駆け付けるという史実にない脚色がしてあり、兵士たちを讃えて一席ぶち、ソビエト兵だけでなくアメリカ・イギリス・フランスの国旗をもった人たちも来て一緒にバンザイを叫ぶから、いくら国策映画としても少々やりすぎである。

 今になっては笑っていられるが。


 小説家の井上光晴が『ベルリン陥落』の思い出を書いていた。

 井上光晴といえば映画化された『明日』が代表作だろうか。原爆投下の前日に、明日なにがあるか知らずに過ごす庶民たちを描いていた。あと記録映画『全身小説家』の主人公でもある。

 かつて彼は日本共産党員だったと言い、その当時、世界各地で話題だった『ベルリン陥落』を党の仲間たちと一緒に映画館で観たが、スターリンの指示で戦いファシストの侵略者を撃破してゆく様子に喝采している無邪気な他の党員たちと違って彼は乗れなかったそうだ。

 ただ、そんな日本共産党員は当時いたけれど、井上光晴の話だから作り話かもしれない。

 
 
 
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