- 井上靜

- 2022年8月12日
- 読了時間: 2分
更新日:2022年8月12日
俳優の小林清志さんが死去した。
声優としてもアニメ映画や外国映画吹替やナレーションとして活躍していた。声優には短命な人が目立つけれど、彼は長生きした。
ところで、よくテレビのCМでナレーションをしていたうちの一つに角川書店の宣伝があった。角川は小説を映画化して同時に売る手法をとっていたが、これ自体は既にアメリカで映画のポスターと原作本の表紙を同じにするなど先に行われていた。しかし角川は小説家も売り出したのだ。

「横溝正史ギルティ、森村誠一ギルティ、高木彬光ギルティ、何ゆえ世間を騒がせるのか」
小林清志のナレーションと共に、画面では三人の小説家が牢獄の中にいる。暗転となって、次の瞬間には三人の姿が消え、牢獄もぬけの殻。サイレンがけたたましく鳴り響き「脱獄だ」と。
横溝正史は『犬神家の一族』、森村誠一は『人間の証明』、高木彬光は『白昼の死角』、それぞれの代表作と言われる小説が映画化されていた。そこへ、この刺激的なCМに三人が出演する。三人とも既に小説家として活躍していたが、これは決定的だった。実に上手い宣伝である。
前に、同級生の父が青学大で森村誠氏一と同窓だった話をした。
この父さんが言っていた。ОB会で新人だった森村氏は、自分の本を買ってくれと皆に言っていたけれど、その後は頼む必要がないベストセラー作家になった。それを同級生は、推理作家になりたいけれど才能が無いからと僻んでいた。
このさい同級生は「角川の売り方が上手だっただけ」とも言っていたのだ。これはみっともない嫉妬だけど、角川が上手だったことは確かだ。
角川の父の源義は岩波茂雄みたいな人だった。
彼の記念館が杉並区にあって、行ったことがあるけれど、そこで感じたのは、これに対して息子は独自性を出そうとしたのだろう、ということ。
そして、この下で働いていたから、幻冬舎の見城社長は、時々なにかあるにつけて有名な小説家に対して、小説家が生意気にという趣旨の発言をするのだろう。


