- 井上靜

- 8月18日
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「富田メモ」という日経新聞のスクープがあった。
これは富田宮内庁長官が、昭和天皇の発言を書き留めておいたもので、ここに、今後は靖国神社を参拝しないと言っていたことが書かれていた。なぜなら靖国神社がA級戦犯を合祀したのが不愉快だからであるというのだった。
その記述は、昭和天皇が靖国神社の関係者の名を挙げて批判しているなど具体的だったし、ちょうどそこから実際に昭和天皇は靖国神社を参拝しなくなったから、この信憑性は確かだという評価が固まっている。

靖国神社にこだわる人たちにとって「富田メモ」は衝撃的だった。
「靖国神社に反対する者は日本人じゃない」と興奮して言っていたけれど、それなのに昭和天皇は、特に批判されているA級戦犯合祀が不愉快で参拝をしなくなったというのでは、非常に困る。
それでなんとか否定しようとしたが、無理だった。しかし「ネトウヨ」は否定した。「朝日新聞の捏造だ」と。日経新聞のスクープなのに。ネトウヨが何か言うのは、こうした滑稽な雛型にあてはめて言うから、誰が何を言っても同じになるし、事実でなくても構わない。だから「ウヨ」は右翼ではないと言われるわけだ。
そうしたネトウヨの滑稽なパターンをもう一つ紹介する。
ネトウヨは誰が何を言っても金太郎であるが、そこでよく見かける一つに田中角栄首相が残した言葉にケチをつけて得意がっているのがある。田中角栄首相は言った。「戦争を知っている者が政治の中枢に居るうちはいいが、居なくなったら危険だ」と。この警告が、今ちょうど当て嵌まると言われているけれど、これにネトウヨは「ヒットラーは戦争で活躍して負傷したから勲章を貰っている。この事実だけでも田中角栄の言うことは間違いで、そんな言葉をありがたがるのはバカだ」
田中角栄は、庶民として軍隊に狩り出されたので虐待された経験を持っている。
だが、田中角栄もと首相の後ろ盾で首相になった中曾根康弘は、東大を出て内務省に勤務するなどエリートコースを進んでいるなかで海軍士官になったから酷い扱いを受けた経験がない。だから田中角栄は、中曾根が土下座して頼んだとも言われているが、そのさい側近に説得もされたので、後から考えを変えたけれど、最初のころは中曾根を嫌っていた。
そして首相になったあと、中曾根はエリートだったから苦労が解らない、戦争についての考えも軽いのだと、よく庶民から言われていた。
中曾根と同様に、ヒットラーはどうなのか問題になる。
ヒットラーが戦争で勲章を受けたことは事実でも、それは「戦争を知っている」ことになるのか。他の人たちのことも、そういう問題がある。そもそも、戦争に行った体験と、その体験によって得た認識は、人それぞれである。この当たり前のことを語らず、ただ漠然とした事実を挙げて、事実だけで反駁できると得意がっているのはみっともない。ただトリビアを提示しただけ。大したことないのに知っていることをひけらかして得意がっているのは無様だ。
これはビートたけしが「なら~は何だっての」と言って真面目な話を茶化して面白いと錯覚させているのと同じである。たけしの場合はギャグだし、ギャグにしても初期に比べて質が低下していた。
この質低下したビートたけしのギャグと同じことを、政治の話でやらかして自己満足しているのがネトウヨである。


