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​炬火 Die Fackel 

  • 執筆者の写真: 井上靜
    井上靜
  • 9月28日
  • 読了時間: 4分

更新日:11月26日

 三重県松坂市で59歳の女性が詐欺の疑いで逮捕されたという。

 これは、収入を申告せずに生活保護を受けたからで、それを報じた地元の有力紙(三重県松坂市に限ると全国紙より影響力があるともいわれる)『夕刊三重新聞』の記事が基になっている。

 これを主婦むけサイトマガジン『シュフーズ』が受け売りのうえ不正な脚色をして流布したのだ。


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 まず、不正受給の総額が約289万円になるので「金額が大きい」と注目を集めているという大見出しで、これがネット上でブラウザに意図せずとも表示されるようになっていたことだ。これを流布させることに不純な作為を感じる。

 しかも『シュフーズ』の記事になると、元の『夕刊三重新聞』の記事と違って、不正受給の総額が約289万円に「のぼる」と記述されている。こんな記述をしていたら「金額が大きい」と受け止めるおっちょこちょいな人もいるだろう。しかも、その記事中で「大きい」と言っているとされるのは、あくまで匿名ネット民である。



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 正しく読めば、同記事は「2021年4月から2024年3月までの約3年間」に合計「37回」の金額だと説明してもいる。つまり年に約96万円、月に約8万円である。これが3年と1ヶ月分。小学生にも出来る簡単な割り算をすれば、地方で最低の生活費として生活扶助の基準になっている額である。この明細からすると289万円は「金額が大きい」とは到底いえない。単に、実は収入があるということに市役所が3年ほど気づかなかっただけである。

 それを、高額な不正受給をした人がいると報じているのだから、『シュフーズ』のしたことは虚偽の報道と言ってもいいだろう。

 

 しかも、その虚報によって59歳の女性が逮捕されたことを当然視させている。

 この程度のことなら、不正になることを当人に指摘したうえで、生活保護を打ち切り、既に渡した3年一か月分の返還を求めれば済むことである。それだけでは「だめでもともと」と不正な申請を役所にして受け取り、バレたら返せばいい、ということになってしまうとの危惧があるなら、返還にさいして利子を付けることだ。これは他のことでも公的機関がやっている。役所の単純なミスが原因であっても、市民に返還させる時は利息をつけている。それを払わなければ差し押さえする。これは税金などで情け容赦なくやっていることだ。

 ところが松坂市は警察沙汰にした。


 市が少額の問題で市民を警察に告訴するだけでも不適切である。

 しかも、その女性は警察の取り調べに対して「だましたつもりはありません」と疑いを否定しているとも記事は説明している。そこで警察は詳しい経緯を調べているということだから、それがはっきりするまでマスコミに発表することも不適切である。

 言うまでもなく、他の刑事案件でも、警察が安易に発表したり、それをマスコミが無批判に垂れ流し被疑者の言い分をろくに取り上げない報道をしたり、などということは不公正であり人権侵害になる。

 こんなことで市役所が警察に訴えていいのか、警察は追及するにしても逮捕までする必要があるのか、という批判的な記事ならともかく、そうではなくこの記事は、警察の一方的な発表を垂れ流したものだ。いちおう逮捕された人は匿名であるが。

 それを『シュフーズ』は、逮捕された人は悪質であると印象操作する虚報に仕立てたのである。

  

 生活保護の不正で昔から問題なのは暴力団関係者である。

 暴力団員が生活困窮者を装ったり、ほんとうの生活困窮者を利用したり、そうすることで生活扶助費を不正に受け取ることは、昔から生活保護制度の不正の代表格であった。だから警察沙汰になるなら、暴力団がらみであるのが普通である。

 では、この件はどうなのか。それこそ警察が調べるべきことで、だから逮捕までして追及している、ということなら理解できることだ。しかし、そうでなかったら、こんなことで警察が出るのも、それ以前に市役所が市民を告訴するのも、やってはならないことだ。


 ところが『シュフーズ』は、多額で悪質だから逮捕という脚色をして流布した。

 しかも『シュフーズ』の記事でさえ、ちゃんと読めば違うことが判る御粗末。

 その女性に悪意が無いとしても落ち度はあった可能性ならある。けれど、暴力団がらみであるかは警察が何も言ってないから不明であるし、それなのに記事は空々しい印象操作をしているのだから、その女性より『シュフーズ』のほうがよほど悪質である。

 こういう低劣で煽情的なサイト情報が、差別や弱者いじめをはびこらせるのだ。ほんとうに要注意である。

 
 
 
  • 執筆者の写真: 井上靜
    井上靜
  • 9月15日
  • 読了時間: 3分

更新日:9月17日

 参政党の神谷代表が演説のなかで「秋田美人」に言及した。

 そこで、肌が色白であることは異人種との混血のためだと言った。これは昔から言われていることだ。生前の黒澤明が、あの時代の日本人としては大柄で180センチを超える身長であることについて、親戚には青い眼の人もいたと言っていたことがある。黒澤とは秋田県に多い姓である。

 うちの親も秋田県の出身者で、その同郷の同級生に黒澤という人がいるが、秋田県に黒澤という姓の人が多い地域がある。黒澤明監督の映画『生きものの記録』には、主人公の故郷が「秋田県仙北郡」であるという場面があった。ここは、うちの母親の出身地である。そこへ冠婚葬祭で行くと、色白の他に赤毛などなど日本人ばなれした容姿の人はざらにいる。稚内には時々ロシアの漁船が停泊して乗組員が買い物をするからスーパーマーケットにキリル文字の表示があるけれど、そこへ行った時に自分は顔と身長のために間違えられたことがある。

 

 秋田県は男鹿半島が大陸の方へせり出している。

 そこで大陸から渡来した人がいて、交流や混血があったのだろうと言う人もいた。鬼は身体的特徴から日本に来た白人のことであるという説があるけれど、男鹿のなまはげも鬼みたいなので同じだろうと言われている。

 しかし、交流が他の地域よりは多かったとしても、地域に住む人の全体的に身体的特徴へと反映することは考えにくいし、外見の特徴の原因はまったく解かっていない。昔から日本人が「謎の民族」と言われてきたのは、複数の人種が混ざっているらしいけれど、どの人種なのか不明な身体的特徴が見受けられるからである。

 ということで、参政党の神谷代表が言ったことは、かなりいい加減である。


 そこで神谷代表は「白系ロシア」と言った。

 これは革命を逃れて外国に出たロシア人のことである。革命軍を「赤軍」と呼び、革命側が暴力に訴えるのを「赤色テロ」、大勢側が暴力に訴えると「白色テロ」と呼ぶのと同じ語源である。

 それを神谷代表は肌が色白な人種という意味で言った。これが「秋田美人」に影響したと言う。そうとしか解釈できない文脈だった。だから無茶苦茶であると批判され、また嘲笑されてもいた。

 これと同じ無知をかつてテレビで曝したのが久米宏であった。テレビ朝日の『ニュースステーション』で、モスクワと中継のさい「赤の広場」が映ると「ソ連が崩壊しても赤の広場というのか」とボケをかましてしまい「ロシアでは美しいという意味で赤いというのだ」と指摘されていた。


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 もっとひどいのがNHK。

 これはDVDにもなっている。ロシア革命に反対する白系ロシア人が、ナチスと結託して裏切られたことがあるけれど、これについてNHKは、進駐するドイツ軍の兵士たちへ地元の女性が花を送っている映像に、共産主義の抑圧から解放してもらったことを感謝しているというナレーションの説明を入れていた。

 この映像はナチスのプロパガンダ映画のヤラセ場面であり、元の映画は、こうして地元の歓迎を受けたうえで、そこに潜むユダヤ人たちを狩って一掃してやったぞ、というものだった。そこから部分的に抜粋してナチスが感謝と歓迎をされていたという番組にしていた。

 つまり久米宏は参政党の神谷代表と同じ無知だったが、その後なんとNHKはナチスのプロパガンダを利用して故意に虚偽の放送をしていたのだ。こうしてみると、参政党の神谷代表ばかりを笑ったり批判したりしていては甘いというべきだ。

 
 
 
  • 執筆者の写真: 井上靜
    井上靜
  • 8月30日
  • 読了時間: 3分

 野球部の暴力と隠蔽により中途で出場辞退した高校が今年の甲子園大会最大の話題だった。

 そして主催者の朝日新聞に、高校野球への批判が掲載された。異例のことだが、これまで散々に言われてきたのを無視してきたけれど、遂に無視は不可能となったのだろう。

 その批判は次のような趣旨だった。


 高校野球ビジネスはメディアが深く関わる結果、追及を免れてきた側面がある。猛暑下の開催、スポーツ医学を軽視した虐待的な投手の球数、不確定性の高い種目に不向きなトーナメント、強いストレスをかける一発勝負…それはスポーツとして時代遅れ、教育としてもデタラメだ。



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 過去の朝日新聞としては極めて稀な例外があった。

 それは80年代後半に掲載された本多勝一編集委員(編集委員とは当時あった役職で、この肩書が付いたら『スター記者』と言われた。今は編集委員制度もスター記者も無い)の署名記事で、スポーツ医学に詳しい医師へインタビューし、少年野球が未成年者に無理な投球をさせて身体を壊している実態を告発していた。よく載せてもらえたものだと思う内容だった。それくらいタブーだったのだ。


 甲子園球児はジャニーズのアイドルと同じようなものだ。

 もともと高校野球は、未成年の少年に、心身を蝕むまでの虐待といってもいいほどのことをしていた。そのうえで興行に利用し、これによって大人が商売するのだから。

 まったく、高野連および朝日新聞と毎日新聞のやってることはジャニーズ事務所と変わらない。

 

 日本の新聞が新聞ではない証拠でもある。

 『朝日』が夏の甲子園、『毎日』が春の選抜、『読売』はプロ野球の「巨人」、『産経』もかつてスワローズを、『赤旗』初代編集長で権力に弾圧され転んだ水野成夫により、経営していたから巨人で商売する『読売』の元共産党員の渡辺恒雄と同じ、というように全国紙はみんな愚民化政策の野球で売って記事や論説は二の次だった。 東京新聞は地方紙だけど、中日新聞社に買収されてからドラゴンズ贔屓の誌面である。

 よく、たんに発行部数が多いだけで日本を新聞大国といっていたが、これは日本に新聞が無い証拠である。こんなに部数が多くては八方美人になって独自の報道や論調は不可能である。実際に外国人の記者から、発行部数が多すぎる日本の新聞は新聞じゃないと言われてきた。だから渡辺恒雄は、自分が経営する『読売』は世界最大の一千万部であると自慢したところ、外国人の報道関係者から笑われていた。

 

 ただ、新聞と雑誌は、発行部数が多いと広告料金を高くできる。

 そして新聞社の収益の大半は広告料金である。だから新聞社の宣伝に野球を利用している。記事と論説なんか、どうでもいいくらいだ。

 今では新聞の発行部数が激減してどこも経営難だが、発行部数が少なくなったほうが新聞らしくなるから結構なことなのだ。その方が新聞が生き残れる。新聞の危機なんかじゃなく、新聞社が肥大しすぎた社屋の維持にくだらない苦労をしているだけである。

 そういうことなので、ジャニーズ事務所が無くなれは芸能が少しは健全になるように、新聞社が関与しなければ高校野球も少しは健全になるはずである。

 
 
 
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