- 井上靜

- 2022年9月30日
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ロシアのプーチン大統領が、今年の穀物収穫は記録的と述べた。
今年は既に1億3870万トンの収穫があり、最終的には1億5千万トンになると予想されている。プーチン大統領の就任からロシアの穀物生産量は過去に比して25倍である。
ウクライナ-クライシスの影響でウクライナからの農産物や肥料の輸出が打撃をうけて食糧難が心配されている一方でのことだ。

かつてプーチン大統領は、温暖化問題で暴言を吐いたと批判された。
少し温かくなってくれたほうが寒いロシアには好都合だが…と言った部分が不謹慎ということだった。スペインなど南欧では熱波で何千人もの死者が出ているからだ。その温暖化が農業に影響を及ぼしているのか、プーチン政権の農政がうまくいっているのか、他の要因もあるのか。
フルシチョフ首相は農政の失敗で失脚した。
寒冷地でも育つ農作物の開発で、デタラメ農学者の話を真に受けるなどしたことが影響したとも指摘されている。
その後、ソビエトは穀物が不作で足りなくなるとアメリカから輸入するようになった。ソビエト軍は、穀物を積んだ船が出航したのを見届けてからアフガン侵攻した。もちろんアメリカに食糧の輸入を制止されないように。
アメリカのカーター大統領は、アフガン侵攻の制裁でモスクワ五輪ボイコット呼びかけと穀物の禁輸でソビエトに圧力をかけたが、その後のレーガン大統領は、ソビエトを敵視して大軍拡しながら、禁輸を解除した。この商売優先をカーター前大統領は批判していた。
食糧をアメリカからの輸入に頼るソビエトが上得意様のアメリカ。
これが、冷戦の一方での実態だった。ソビエトの一員だったウクライナでチェルノブイリ原発事故があったときも、被爆した人たちのための医薬品の輸入について「穀物を輸入するための外貨を使うことはできない」と、ソビエト中央の役人が言い放つので、地元の人たちは「中央の役人はロシア人だから、ウクライナ人なんて後回しだ」と悔しがったそうだ。
そしてアメリカからも西欧からも無視されているところに、日本から救援物資が届けられた。政府筋ではなく市民団体からで、広島と長崎の人たちだった。だからウクライナはソビエトから独立すると日本の非核三原則を見習い非核政策の実施をしたが、それで大丈夫だろうかという心配する声も国内にあった。とくにNATO軍がユーゴを攻撃した時。ウクライナとは目と鼻の先の場所であるから。そこへアメリカがNATOに加盟すればいいと付け込んできたからロシアと険悪になった。
ところが、昔は対立していても戦争できなかったけれど、今のロシアはアメリカに対してプーチン大統領が「なめたらいかんぜよ」みたいな態度になっている。その背景の一つに、このところの大豊作があるのだろう。
生前、作家の井上ひさし氏が食糧自給率の重要性を良く説いていた。
あの人は農本主義者で、また戦争体験から平和主義者だったが、そのうえで軍拡を説く人たちに対して、食糧自給率を低下させておいて安全保障もへったくれもないと批判していた。
中国は、ソビエトと日本のように食糧自給率の低下でアメリカに屈するようになってはいけないからと、食糧自給率を下げるなというのを至上命題にしている。
今年の日本は、豊作のうえコロナウイルス禍などで外食産業の購入が減っているから、米だけは値下がりしている。とりあえず小麦より米にしておくのが賢明みたいだ。


