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映画『家族を想うとき』で思い出したこと

  • 執筆者の写真: 井上靜
    井上靜
  • 2022年11月29日
  • 読了時間: 2分

 英国の名匠ケンローチ監督の映画『家族を想うとき』の題名について。

 これは物語の内容と合っていないという人たちがいる。たしかに、このような題名にするとしたら『家族を想えども』のほうが適切ではないだろうか。原題を直訳すると「すみませんが不在です」という、配達の人が最も困ることを意味する言葉である。配達の仕事を始めた男が、家族のために頑張っているつもりだが逆に家庭が滅茶苦茶になってしまうという話だから。


 ここで配達の仕事というのは「名ばかり個人事業主」であった。

 もとは運送会社に就職を希望していたけれど、社員として雇うと経費などが会社の負担になるから請負契約しか受け付けてない。それで仕方なく契約するが、フランチャイズの建前だから経費を自己負担のうえ、自分で仕事を調整できず過重労働を強要され、従わなければ違約金という詐欺的な契約であった。

 こういうことは、最近ではAmazonの配達をしている人たちが騒いで話題になったし、他の業種でもコンビニ店が「名ばかり個人事業主」で問題になってきたことは周知の通りである。


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 ここで個人的な思い出が蘇る。

 かつて御歳暮や御中元で、近所の店に受け取りを依頼していたことがある。映画の原題である不在で御免ということがあるからだ。このさい、要冷蔵の食品を常温にさらされ腐ってしまったことがあった。

 こんなことがあると法的には「善管注意義務」で預かった者の責任だが、しかし要冷蔵であると知っていたら預からなかったはずだ。その店は飲食店ではなく、店主は自宅から通勤しているので、冷蔵庫は無い。

 映画の劇中で、不在だから近所の人に依頼したけど、仲が悪いから嫌がられたという場面があり、日本の配達でもよくあることだが、そんなことは無かった。いつも預かってくれてありがとうと御裾分けしいていたから、嫌々ということはなかった。

 おそらく、要冷蔵だと保管できないと言われて断られるだろうから、そのことを配達員が隠したのではないか。よく「ワレモノ」とか「要冷蔵」とか大きな目立つシールが梱包に貼ってあるものだけれど無くて、伝票に小さく「要冷蔵」と表示されていただけだったから。配達員としては届けてナンボであるから、それくらいのことはやりかねない。


 こんなことがあるのも、従業員に負担を押し付けて安く引き受ける事業の手法のためだ。

 そして、客は得するばかりでないし、経済的に社会全体の混乱と損失になるのだから、自分は利用者でいられる結構な御身分だと慢心していては駄目なのだ。

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