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映画『フォレストガンプ』の話題の続き

  • 執筆者の写真: 井上靜
    井上靜
  • 2022年5月20日
  • 読了時間: 3分

 ハリウッド映画『フォレストガンプ』についての続き。

 アメリカと同様に日本でも大ヒットしていた公開当時、テレビ番組で出演者から、面白いけれど、映画館に入場料を払って観るのではなくレンタルビデオでよい内容だし、いかがわしい映画だ、と言われていた。


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 この映画の物語は、主人公フォレスト=ガンプの半生を描いたもので、彼(トム-ハンクス)は軽い知的障害があって知能指数が低めでも、稀な俊足のため大学にスポーツ推薦で入ることができて、アメリカンフットボールでボールを抱えて走ると誰も追いつけないという活躍ぶりが、まずユーモラスに描かれる。

 また卓球も得意で、国技とする中国に行って親善試合をする。この映画は中国で公開されると、「ガンプ」が親しみにくいので翻訳では「アガン」にされていた。日本では『フォレストガンプ/一期一会』だが、中国では魯迅の小説にかけて『アガン正伝』になっていた。

 また、彼は戦争に狩り出されるとベトナムの戦場で負傷者を救う。俊足を生かし負傷者を抱えて安全地帯まで何度も往復する。これで勲章を受けるガンプ。その後は、戦傷で身体障害者になっていた元上官と一緒に始めた事業で成功したり、走って大陸横断してみせ話題になったり。最後は幼馴染の女性と結婚する。


 しかし、この内容では、主人公が知的障害者という設定の必然性がない。

 例えば、ハリウッド映画『レインマン』では、知的障害のある男性(ダスティン-ホフマン)の特殊な能力を利用して、その弟(トム-クルーズ)が博打で一稼ぎするけれど、これは知的障害が原因で極端な記憶力になることがあるからで、モデルになった人物もいる。

 日本の『裸の大将』では、主人公が旅先で観た風景を帰ってから記憶により写真に撮ったように絵で再現してみせるが、これは知的障害者で天才画家といわれた山下清の実話に基づいている。

 ここで山下清は、知的障害のために配慮できず「兵隊の位なら…」とエライ人に言ってしまうなど何でも率直だから可笑しく、これが社会的地位に対する風刺にもなっている。


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 フォレスト-ガンプも、原作の小説では主人公が同じような言動をしていた。

 例えば、戦地から戻り、帰還兵として反戦集会で証言を求められると、戦争がいかに惨いかと率直に語り、また政府や軍が催した式典で英雄として演説することを期待されているのに、対応を変える発想が無くて、反戦集会と同じように、戦争がいかに惨いかと率直に話す。

 こうした部分が、映画化では無くなっていたのだ。


 そして、コメディなのにヒューマンドラマ仕立て。

 だから、いかがわしい映画だと公開当時から指摘されていたし、今では懐かしい名作と言う人たちがいる一方で、あれは今でいうと「感動ポルノ」だったと言う人たちがいるのだ。

 これを、先日、公民館の無料上映会で観たさい、改めて考えたのだった。


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