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南京大虐殺を否定できなくなった日本の事情

  • 執筆者の写真: 井上靜
    井上靜
  • 8月23日
  • 読了時間: 3分

 南京大虐殺の映画が世界的に話題となっている。

 これを観て衝撃を受けたという人がいる一方で、描写が甘いと言う人もいる。残酷な描写は抑制し、史的な事実の調査に基づいたものにしているからだろう。

 ところが、産経新聞紙上に、この映画は日本を貶めるための宣伝であり、南京虐殺が無かったことは研究で明らかになっていると、櫻井よしこが書いた。その研究とは何か。誰によるのか。まったく根拠が挙げられていない。櫻井よしこは他の記事でも問題を起こしていて、薬害では裁判沙汰となり、あの有名な弘中弁護士にとっちめられ、記事は根拠薄弱どころか捏造だと言われるなど、もともとその程度の「ジャーナリスト」である。

 この南京大虐殺について。日本の政府は、詳細には所説あるけれど、事件そのものの存在は明らかであると国会の答弁で認めている。


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 南京大虐殺を全否定する風説は、昔、一部で流行った。

 その中心は文藝春秋社の発行雑誌とそれに基づいた単行本である。その後、文藝春秋社は不利になってきたら「知らん顔」しているというべき状態である。全否定したわけではなかったと弁解できる余地を最初から残していたからだろう。

 昔は、これら否定論を受け売りする政治家がいた。そのため中国政府は、戦争のことで日本に怒る国民に、悪いのは当時の日本の権力者であるから日本人全体を憎んではいけないとなだめてきたけれど、対応を変えて、南京大虐殺など日本軍の蛮行の周知に積極的となった。だから、日本人の中には「中国や韓国は昔のことを何時までも言っている」と、お門違いの非難をする者がいるけれど、文句を言うなら自分の国の政治家に対して先ず言うべきである。


 学生の時に、中国人と韓国人の留学生と一緒にバイトしていた。

 その時、勤め先の社長が、やはり「過去のことを言わないで前向きになって仲良くすべきなのに。だから韓国は駄目なんだ」と、と軽々しく言ったら、韓国人の留学生はちょっと気色ばんで「僕もそう思って日本に来ました。なのに、日本に来たら、韓国で年配の人がよく言っていた戦争の時の話とまったく同じように韓国人を悪く言う日本人ばかりでした。仲良くする気が無いのは日本人の方でしょう」と言った。

 このやり取りを見ていて、自分の国の政治家が原因を作っているのに、それを批判しないで外国の悪口を言うのはみっともないと思った。それと同時に、こういう日本人は多いなとも思った。


 社長は、中国人の留学生には共産党の悪口を言っていた。

 当時、中国が経済に力を入れて発展が加速していることについて、それでも共産党が政権に就いている限りは経済的発展に限界があると説いていた。これは、よく言う人がいたけれど、その安易な受け売りだった。

 このとき、その中国人の留学生は大人しい人だったから反論するのではなく、いずれ結果は判るから、その時に同じことをもう一度言えるかどうかだ、と言っただけだった。

 そして今その結果が判っている。中国が日本を追い越しただけでなく、日本が衰弱して再起不能と言っておいたほうがいいくらいだ。その後、雑誌の仕事をするようになったさい縁あって週刊文春の記者をしている同世代の人に質問をした。ナチスの虐殺を否定する記事で文藝春秋社は雑誌をユダヤ系資本の圧力で潰され、その張本人である花田という編集長は追われるように退社したが、そんなふうに中国が経済力をつけてユダヤ系と同じように出来るほどになっても、前と同じように「南京大虐殺は無かった」なんて出来るかと。

 「できるわけないでしょう」という返事だった。   

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