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  • 執筆者の写真井上靜

推理とSFを復興させた角川春樹の功績

更新日:2023年7月22日

 「いまもし本格探偵小説が復活するとしてもそれは松本清張氏が築き上げた社会派リアリズムの洗礼をうけたものでなくてはならないでしょう」


 これは1977年、森村誠一『人間の証明』の角川文庫に収録された横溝正史の解説の一文である。

 『人間の証明』は殺人事件の被害者が発した謎の言葉を追及することから次第に事件の背景が明らかとなるので、松本清張の『砂の器』から影響を受けている。


 「角川書店は今度『野生時代』という月刊誌を発刊することになり、これに掲載する小説を書いて欲しい。映画化を念頭に、あなたにとって作家の証明となる作品を」

 角川源義の跡取り息子である角川春樹が森村誠一を訪ねてきて、そう言って執筆を依頼したと、森村誠一は述べていた。それで『人間の証明』と『野生の証明』が書かれた。それに映画化もされて話題だった。



 『野性時代』は同時に、そのころ星新一が人気だったの対し本格SFをと小松左京の小説を掲載した。

 また、今ではコロナウイルスで現実化したのではないかと話題になった小松左京のSF小説『復活の日』をオールスターで映画化した。

 だから、ジャンル物小説の双璧である推理とSFの復興は角川春樹の功績ではないだろうか。


 その後、角川春樹は不祥事によって角川書店の社長を退くと、映画製作していた角川春樹事務所で出版事業を続け、角川書店は弟の角川歴彦が社長に就任した。大映は角川映画となって、調布の撮影所には大魔神の像と角川映画の看板である。

 かつては一緒に父親の下で働いていたが、顔は似ていても仲が悪い兄弟だったので、兄が弟を追放してしまった。そして兄が追われると弟が復帰、その弟も逮捕されたことは記憶に新しい。

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