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宮尾登美子の小説と映画化

  • 執筆者の写真: 井上靜
    井上靜
  • 2023年1月7日
  • 読了時間: 2分

 宮尾登美子の自宅は多摩川の近くにある。

 それで、遠くから来客があると、近所を散歩のさい多摩川の土手をのんびりと行き、そのさい宮尾と表札がある家は小説家の宮尾登美子邸だと言うと、関心のある女性などは悦ぶ。

 

 また、宮尾登美子の小説は地元の図書館で読んでいた。

 かつて宮尾登美子が『徹子の部屋』に出たさい、宮尾作品のヒロインには気性の激しさを発揮する女性がいるという話題で、その例として黒柳徹子が「なめたらいかんぜよ」の台詞を引き合いに出したが、ここで宮尾登美子は明らかに苦笑していた。おそらく、黒柳徹子は映画を観ていたが原作の小説は読んでいなかったのだろう。それでの苦笑ではないかと思った。

 

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 あれは東映のベテラン脚本家の高田宏治が、原作に無い台詞を入れたのだ。

 これについて、高田宏治が自らの脚本について語っていたのを本で読んだところ、ここでヒロインに啖呵を切る台詞を言わせたらよいと考えて、それまで他の登場人物たちが言っていた言葉をヒロインにも言わせたと説明していた。

 また、この『鬼龍院花子の生涯』での「なめたらいかんぜよ」の他にも、宮尾登美子の小説を高田宏治の脚本で映画化した『蔵』(監督は別)で、ヒロイン烈の決意を示して「烈は本気だすけ」と、原作にない台詞がある。「~だから」の方言で「~だすけ」は原作でも他の場面で頻繁に出る。それを啖呵のようにしているわけだ。


 小説では説明するものだが、そうはいかないのが映画である。

 それで、説明する代わりに表現する台詞を入れることがある。ところが、原作にあると思い込む人たちがいるわけだ。

 そんなことを、多摩川を散歩していて思い出したが、宮尾登美子さんの死後その遺産がどうなったのかなどは作品と無関係で興味もないから不知である。

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