大岡昇平が原作の映画『明日への遺言』
- 井上靜

- 2022年9月1日
- 読了時間: 3分
過日、大岡昇平が原作の映画『野火』について新旧の比較をしながら述べた。
大岡昇平が原作の映画といえば『明日への遺言』もある。これは事実に基づいた戦後の法定ものである。原作の題名は『ながい旅』
最初、米軍機の空爆は吉祥寺にある中島飛行機の航空機工事が標的にされていた。軍用機のエンジンを製造していたからだ。ちなみに中島飛行機の経営をする中島家の人々は、のちに映画製作をしたり政界進出したり、アメリカのハワード-ヒューズみたいであった。
ところが、司令官があのルメイに代わる。
すると目標を軍事施設に絞らない無差別爆撃をするようになっただけでなく、一般人が逃げられないように追い詰めるやり方になった。その当時すでに、あくまで空爆は軍事施設を狙うのが国際的な約束だった。
だが、英独は無視して都市を攻撃し、日本も同じであった。それで米国も同調したのだが、しかし都市を攻撃するにしても戦争を諦めさせる圧力のためで、その結果として民間人が巻き込まれ殺傷されていたけれど、ルメイは非戦闘員の殺傷そのものを目的にした空爆をしたのだ。
撃墜された米軍機もあり、脱出してパラシュート降下した乗組員が捕らえられた。
爆撃で多大な被害があり、無残な犠牲者が大勢いたことで、その怒りから捕らえられた乗組員たちは殺された。無抵抗の捕虜を虐殺した疑いで戦後に裁判となる。
ここで被告となった若い兵士は、怒りにかられてのこととはいえ残酷なことをしたと苦悩し、これに対し指揮官は、自分の命令であったのだから責任は自分にあると慰める。

ここで、アメリカ人の法学博士が弁護人を務める。
これを知った当初の被告側は、アメリカ人がちゃんと弁護してくれるのかと危惧したが、この博士はとても公正で、証人へ質問するさい米軍機が爆撃した場所に軍事関連施設はあったかと確認し、無かった確証を得ると、それなのに爆撃したのだから先に違反したのは米軍機であり、被告らは戦闘状態が続いた中で乗組員を殺害(無差別爆撃はハーグ条約違反として略式で処刑した)のであるから捕虜の虐殺とは違うと立証する。
そのとおりだが、しかし米軍の戦争犯罪を裁くことになると言って米軍側の検察官が猛反発する。それでも博士は、被告らの有罪無罪を決めるのに必要不可欠であると譲らず、これを米軍の裁判官も認める。
ただ、被告らの有罪が揺るぐかは微妙である。
それで司令官は、若い部下たちが自分の指揮下にあったと強調する。これでは司令官が死刑となってしまうが、すべての責任を背負う覚悟である。これに裁判官も検察官も同情を禁じ得ない態度を見せる。
まだ話は続くが、興味がある人は映画を観るとよい。
それにしても、米国の法学博士が自国贔屓せず公正な弁護をする姿は立派で、これは本当のことだったが、しかもその主張を米軍も認めていて、つまりルメイのやり方に批判的だった人たちが米軍にもいた、ということでもある。
そんなルメイに日本は勲章を贈った。戦後、航空自衛隊に協力したからという名目で。あの空爆の大勢の悲惨な被害者たちを想えば到底できないことだが、そんなことをしたのは周知のように小泉防衛庁長官である。
その息子の小泉純一郎首相は、日本の富を米国に渡したり、デタラメなイラク戦争を支持したり。
これを誤魔化すために靖国神社参拝している。それで八月十五日に靖国神社へ参拝に来た人が「騙されてはいけない」と言っているのが記録映画にあったことは過日の話題に出したとおり。
そんな「売国が家業」ともいうべき小泉家が、さらに次の代まで政治家を続けているけれど、ほんとうに恥ずかしいことである。



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