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一円に笑うものは一円に泣く

  • 執筆者の写真: 井上靜
    井上靜
  • 2022年4月23日
  • 読了時間: 2分

 岡山地裁が56円の支払い命令。

 これは、JR西日本が、運転手の作業ミスにより回送列車が1分の遅れを出したことで、その1分の分に当たる賃金43円を給与から差し引き、これを不当として運転士が賃金43円と残業代13円、慰謝料200万円などを求めた訴訟を提起した判決だった。


 もともとJR西日本は列車の遅延に神経質であると評判だった。

 それにしても、業務上の過ちがあったとしても罰金や弁償で給与から差し引くことは禁止が基本である。給与は生活がかかっているからだ。少額だからと許していては限が無くなって危険である。


 たった56円で裁判しては手間暇費用を考えたら赤字だ。

 しかし、例えば銀行で、帳簿上1円違っても計算しなおしとなるのは、1円もったいないからではなく、計算違いだから。小銭が入った袋や箱を落として中身ぶちまけてしまって拾い集めて数えたら1円足りないのとは訳が違う。紛失なら、今後は置き場所に気をつけるということで、1円など損失は損失だけど気にするほどではない。

 しかし、帳簿上の違いであれば、たまたま1円だけど原因を放置していたら1億円の違いにもなりえる。それと同じことで、問題は金額ではない。その原因が不当労働行為だから。あとは説明するまでもないだろう。


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 しかし理解できない人もいる。

 そんな少額で訴訟なんて意地を張っていて馬鹿げていると言う人がいた。これで思い出したのは、小学生の時に住んでいた家の隣に銀行員が住んでいたことだ。この人が、1円の違いでも残業して計算しなおしという話を自分の母親にしたところ、その意味を理解できない母親は、1円もったいない業界だと言った。無くしたのを探させられるのではなく、計算しなおしさせられると言っているのに。

 そうしたら、弁護士でも解らない人がいた。人権に関わるけれど商売にならないから引き受けないという人はザラにいるが、金額ではなく原因だという意味を理解できない人がいる。ということは自分の母親に学が無かったからではないが、さて原因は何だろうか。


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