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ホームビデオの普及とアマチュア映像芸術の消滅

  • 執筆者の写真: 井上靜
    井上靜
  • 2021年6月20日
  • 読了時間: 2分

更新日:2021年6月23日

 アマチュアの映像作家による短編映画が、機器の発達によって昔より今は盛んになったかというと、逆に衰退している。

 この話題から、SNSを通じて機器と映像作品の問題になったので、自分でも直接に知っていること語ろうと思う。


 かつて、家庭用の動画カメラは8ミリフィルムが主流だった。ネガが無いので複製は簡単ではないが、その代わり手軽に撮影できるという利便性があった。

 これは旅行や家族を撮影するためだけでなく、ドラマやドキュメンタリーの短編映画製作にも使用された。これがホームビデオの普及により衰退したうえ絶滅も同然の状態になる。


 これらは、どう関係しているのか。

 まず旅行や家族の撮影は、長時間の撮影が可能で現像不要のホームビデオの方が便利である。また初期は大きくて重たかったビデオカメラも、そのうち技術の進歩により片手で軽々と扱えるものが出る。こうなると、フィルムのムービーカメラは専ら芸術作品が使用目的になってくる。

 そして、全体的な売り上げが減って利益が少なくなる。これまでカメラやフィルムのメーカーが、その利益からアマチュア映像製作のコンテストや主催団体に財政援助していたけれど、厳しくなって遂に打ち切りでコンテストの中止や団体の解散という事態になる。


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 こうして、80年代から、ホームビデオの普及に伴いアマチュア映像作家と小型映画の作品発表の場が消えていく。

 また、いくらホームビデオが普及しても、画質や音質などから芸術作品には向いていなかったが、そのうち技術的な進歩があって芸術作品が製作できそうでも、発表したり競い合ったりということが、かつてのようにはならなかった。


 なぜなら、まずテレビ番組でとりあげる一般家庭のビデオは、偶然に撮れたハプニングを面白がるものが主流であったから。

 次に、映像作家を目指す若者むけのテレビ番組は、周知のとおり前衛的というのではなく奇をてらっていて悪ふざけのようにしか見えない作品が高評価される。そんなものしか応募がないのかと思い真面目な作品や芸術的な作品を送ると、必ず、事前審査で不採用になったという通知とともに返送されてくる。

 これは、カメラやフィルムのメーカーではなくテレビ局のすることだからだ。機器の製造業者なら、それを上手に利用して高い水準の作品が世に出ることを歓迎するが、テレビ局は違う。軽い娯楽番組と定義していることに加え、優秀なアマチュア映像は自分たちの地位を脅かすので黙殺する。


 こういう関連があった。

 そして、機器の進歩と大衆化によってアマチュアリズムは逆に衰退したのだった。



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