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ゴルバチョフとチョムスキーと北斗の拳

  • 執筆者の写真: 井上靜
    井上靜
  • 2022年9月4日
  • 読了時間: 4分

 ゴルバチョフ元大統領が91歳で死去した。

 とくに彼の活躍で冷戦時代が終わったものの、むしろ冷戦時代より後のほうが各地で戦乱が頻繫するようになった。これについてゴルバチョフ氏は、アメリカに騙されたという意識があったようで、その後はプーチン大統領のやり方を批判しながら、それもやむを得ない部分が多いと認めていた。



 アメリカの著名な学者ノーム-チョムスキーが指摘していた。

 例えばイラン・イラク、リビアなど産油国でのことは典型的だが、欧米の支配下で地下資源を収奪するよりも、協力して開発し、共同で使用して、互いに利益を上げたほうが、効率的なうえ、利益の絶対量も多いから、相手方だけでなく自分だって得になるなど、何かと合理的であるが、それなのに相手が前向きになったところへ騙し討ちのようにして、戦争になるように仕向け混乱させ、相手方を苦しめたうえで自らも大損している。

 なぜ、こんなことをするのか。どんなに損であっても、それより優先することがあるからだ。では、よほどのことかというと、実はつまらなくて実にくだらないことなのだ。ただ、他人の所にある他人の物を自分のものにしてしまう、ということでないと満足できないのだ。

 こういう発想がアメリカにあって、ヨーロッパではイギリスに強くて、むしろアメリカ以上で、フランスも似たようなものかと思いそうだが、この点では米英に対して昔からフランスは批判的である。だから原因は植民地主義ではなく、それ以前の文化にある。


 それと同じなのが「ブラック企業」である。

 そして『北斗の拳』の悪役である。去年のプロ野球でリーグ優勝したチームの主力打者のニックネームがそのキャラクターだったくらいなので、80年代のマンガだけど今も人気があるから解る人は多いだろう。

 このマンガは、主人公の拳士が強敵と死闘を演じるのがクライマックスだが、そのイントロでは、残忍な弱いもの虐めをする子悪党を主人公が血祭にあげる。作者によると、日常的に見かける子悪党をマンガの中で死刑にしてスッキリするという意図だ。

 例えば、荒れた土地をなんとか畑にしようという老人が、苦労して種もみを集めると、ならず者が奪おうとする。それは少なくて食べても腹の足しにならない。それより植えて上手くいって収穫があれば皆で食べられる。だから貴方にも食べさせるつもりだと老人が言う。すると、ならず者は「それを聞いて、なおさらその種もみが食べたくなったぜ」と薄ら笑いを浮かべて老人を虐殺する。

 これと同じ程度の嫌らしさを発揮する者なら、よくいる。殺人までしないだけだ。また、これを組織的に行うのがブラック企業だ。さほど得しない。むしろ損であるかもしれない。不合理でも他人を苦しめて収奪する。こうして劣情を満たすのだ。


 「鬼畜米英」も同じである。

 『北斗の拳』の主人公は、老人を虐殺した無法者を血祭りにあげたあと、老人の墓を作り葬ると、そこに種もみを撒く。そんなことをしても無駄だと指摘されても、土の下に眠る老人の思いがあるから実るはずだと言う。だが、その表情からは諦観が読み取れる。

 なぜ諦観なのか。他のことでも同じだから。例えば井戸水を皆で飲んでも充分なのに、井戸を占領して自分たちだけのものにしたがる暴力集団がいたりする。地上が荒れているのは戦争のためだが、それでも人間は懲りない。これが戦争の根本的な原因であると暗示している。

 そして、中東の石油でも、ウクライナの天然ガスでも、同じことになっている。日本は「鬼畜米英」と言って戦争したが、実は便乗して自国の利益を図っていた。後ろめたさのうえ敗戦によって従属国も同然となったから仕方ない部分もあるが、だとしても今のアメリカやNATOへの隷属した態度は卑屈である。


 その卑屈を三代続けた、まさに売国を家業としてきた人を国葬にするということだ。

 病気で倒れて総理大臣になれなかった二代目を別にすれば、初代の岸首相は米傀儡へと成り下がった首相に怒った右翼に刺され、三代目は韓国人教祖の犠牲者である元自衛官に撃たれた。外国勢力や反体制派に暴力をふるわれたのではない。それなのに国葬である。

 ところでゴルバチョフ国葬は無いそうだが、プーチン国葬なら将来の可能性はあるだろう。しかし日本のように最も相応しくない人の国葬をする国は、他にないだろう。

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