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  • 執筆者の写真井上靜

オーディオマニアとネコ


 先日死去した立花隆はオーディオマニアとして知られていたが、その双璧くらいに言われていたのが赤塚不二夫だった。

 かつて生前の赤塚不二夫がテレビのインタビューを受けていた時、壁一面が棚になっていてレコードがギッシリだったという話を知人にしたら「彼はオーディオマニアだから」と言った。この知人もオーディオマニアだった。

 彼はオーディオ熱が冷めていたけれど「あんたがオーディオフェアに連れて行くから再燃してしまった」と言った。FM雑誌を読んでいたら、来週池袋のサンシャインシティでオーディオフェアが開催されると書いてあった、という話をしたところ、この人が勇んで「行こう」と言いだし、それで行ったらウグイス嬢たちが最新機器を紹介しているのに刺激されて彼は、あれも欲しいこれも欲しいと言い出した、というのが真実である。


 もう一つ、テレビで赤塚不二夫の自宅内が映ったのを見たことがある。

 その時はネコの話だった。赤塚不二夫が飼っているネコは、仕草がユーモラスなのが受けてCМによく出ていた。その出演料のほうが漫画の原稿料より多かったのではないか、オレよりネコのほうが稼いでいたのではないか、と赤塚不二夫は言っていた。そのさいネコが歩いている後ろに大型で高価そうなスピーカーがあった。

 よく、ネコがスピーカーのサランネットをひっかいて破くことがある。前に近所の同級生が、大事にしているステレオを母親の飼っているネコにやられて嘆いていて、しかもそれを彼の母親は平気でいるから怒っていた。


 そのころ、うちにも母親が勝手に拾ってきた仔ネコがいた。

 これを可愛いと言ってばかりで世話は全部こっちがやる羽目になったので困っていたが、このネコはスピーカーのサランネットをひっかこうとしたから叱ると、もうやらなかった。そして布張りの壁をひっかいていた。

 この仔ネコは元気だったけれど虚弱体質でもあったので長生きできなかった。そのあとしばらくはネコがいなくて平穏だった。


 ところが、たまたま読み終わった文庫本を母親が表紙に魅せられて読んでしまった。

 それがハヤカワ文庫ロバートAハインラインの『夏への扉』だったから始末が悪い。またネコが飼いたくなったと言い出した。どうせ自分で世話しないくせに。しかし、その後は大学に行くため親戚のうちに居候していたから煩わされることなかった。自分のことに集中して「これからは、いつだってグッドイーティングさ」という晴れ晴れした心境であった。

 

 これはネコが表紙のようにしていたので撮った写真である。



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