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アイドルも水商売もダメなのに

  • 執筆者の写真: 井上靜
    井上靜
  • 1月10日
  • 読了時間: 3分

更新日:1月10日

 中山美穂は楽譜を自分で読み唄っていた。

 これは昨年、中山美穂の死から思い出して話題に取り上げていた。中山美穂は俳優としてテレビドラマに出演する一方で歌手としてヒット曲を出し「みぽりん」の愛称でアイドルとして人気だった。しかし歌唱はしっかりしていて、自分で楽譜を読んで唄っていた。アイドルは楽譜を読めず他人に唄ってもらい憶えることが普通なくらいなのに。

 この話にショックを受けていた女の子がいた話もしていた。その続きである。


 彼女は中山美穂に憧れて芸能を志向していた。

 しかし、アイドルなら楽譜を読めなくて良いと甘く考えていたから、ヒット曲を次々と出している憧れの中山美穂が、その歌を自分で楽譜を読んでいると知って衝撃だった。

 また、彼女には兄がいるけれど、兄は楽譜の読み書きが出来る。これは自分でバイトして楽器を買ったり音楽教室に通ったりしていたからだ。プロになりたいとまでは思ってなくても、好きなことはそれ相当にできるようになろうと努力したのだった。そういうことを一切しない妹だった。


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 大学進学でも同じだった。

 彼女は受験勉強を全然やらないから、大学進学できないに決まっていた。高校を卒業したら会社に就職したが、二ヶ月か三ヶ月で辞めてしまう。彼女の兄は家庭の条件が悪い中で頑張って大学進学すると、苦学していた。それを妹はバカにしていた。そんなことしなくても、自分は「お水」でもやれば学費なんて簡単に稼げると威張って言う。仮にそうだとしても他人の悪口を言うものではないし、水商売は客にも同僚にも気を遣う世界であるから、甘く見ている。実際に、やろうとしたけれど直ぐにクビになった。なにより仮に水商売で稼げたとしても、受験勉強しないのでは大学に入れない。

 そして、いわゆるフリーターになって臨時雇いを点々と繰り返すが、この時に同じ高校の女子が正社員として働きながら通信制で単位をとり卒業したので、真似してやってはみたが一単位も取得できず辞めているし、他の女子で高校まで成績が良かったのに大学は不本意な所にしか入れなかった人がいて、それを嘲っていたけれど、この人が大学卒業し就職して苦労しながらも数年後には責任ある仕事を任せられるようになったら、もう嘲ることはできなかった。

 そして兄が大卒になっていることを「いいなあ」と唇を歪めて言っていた。


 これは母親が原因である。

 とてもじゃないがアイドルも水商売も無理なのに、自信過剰に仕向けてしまっていた。どういうわけか、自分の娘を過大評価する母親がいるもので、どう見ても月並みなのに絶世の美女のように娘を見ているし、そうしたければ仕方ないが、誰でも普通にしている努力をさせないというのは、どういうことか。多分、自分がそうだったか、そうであったと勘違いしているか、なのであろう。


 その後、それぞれ独立した。

 すると、家賃を滞納したという苦情の電話が、複数の大家から、つまり引越すたびに、兄にかかってくる。勤務先に問い合わたら、とうに在籍しておらず困ったということだった。仕事が長続きせず、兄の電話番号は、勝手に連絡先にしていたということだ。

 それで電話番号を変えて、一切の連絡を絶ったという。母親のせいだが、すでに年齢から自己責任であるから。 


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