『ラデツキー行進曲』と『人類最期の日々』
- 井上靜

- 2022年1月4日
- 読了時間: 2分
更新日:2022年1月15日
ウイーン-フィルのニューイヤーコンサート中継でNHKは、このコンサートについてろくに知らない芸人をゲストに招きデタラメ発言させていたから批判された。
まずゲストの落語家が、このコンサートで必ず最後の曲目として演奏されるのが『ラデツキー行進曲』であることを知らなかった。
さらにもう一人のゲストであるモデルの女性が、軍楽である『ラデツキー行進曲』で締めくくられるものなのに「平和産業」と言っていた。
このことから、ひどい発言が飛び出したものだと批判され、NHKは何故こんなに無知な芸人たちをゲストに選択したのかと問題になったのだった。
これが前回と前々回の話題だった。
そもそも『ラデツキー行進曲』は軍人を讃える曲として作られた。
この曲は1848年、ヨハン-シュトラウス父が、同年に北イタリア独立運動の鎮圧に向かうヨーゼフ-ラデツキー将軍を讃えて作った。

カール-クラウスの『人類最期の日々』で問題にされた一つがバティスティ殺害であった。
チェレザーレ-バティスティ(1875年~1916年)はイタリアの社会主義者で、当時オーストリア領だった南チロルより選出され1911年からオーストリア帝国議会の議員であったが、チロル州をイタリアに回復させる運動「イレンデンタ同盟」の主唱者としてオーストリア軍部の手で処刑された。

そしてカール-クラウスは、その絞首役人および便乗する人たちを告発した。
みんなで吊るされた死体と一緒に嗤いながら記念撮影している。これが最初は関係者の記念撮影だったが、そのさい既に我も我もと一緒に映りたがる人たちがいたくらいだから、その後は絵葉書になって大々的に売り出された。こうしてオーストリア-ハンガリー帝国がいかに残酷であるかと諸外国から印象を持たれた。
しかしNHKがウイーンフィルのニューイヤーコンサートを中継すると、オーストリア-ハンガリー帝国がいかに繁栄していたかという構成になる。
そもそもウイーンでも、世界の戦争や貧困など何処吹く風という特権階級が着飾って鑑賞して、音楽を楽しむだけでなく「勝ち組」であることに御満悦であるが、その面々を撮影しながら、ゲストには無知な芸人たちを招いてバカ発言させるという次第であった。

きれいごと放送したければ、変な芸人たちを呼ばなければいいのに。

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