Twitterと時計じかけのオレンジ
- 井上靜

- 2020年11月29日
- 読了時間: 2分
更新日:2021年6月24日
犯罪への対応で、警察や政府を批判すると「被害者のことも考えろ」と怒る人たちがいるものだ。前にTwitterで、悪ふざけではなく善意で言っていた顕名で顔写真付きアカウントがあった。
このような人には、犯罪への対応をすること、被害者を救済すること、やり方が適切であるか否か、これらは別の問題であることが理解できないのだ。
例えば映画『時計じかけのオレンジ』に描かれている図式。
犯罪に遭った作家は、妻が死んで、自らは車椅子生活となったが、しかし犯罪対策で支持を集める政府に批判的である。その対策とは、薬物で洗脳したり暴力警官を増やしたりと、どれも危ない手法なので。また内務大臣は「犯罪者の更生に予算を増やせない。刑務所を満員にするのは政治犯であるべきだから」と嘯く。上品そうな爺さんだがファシストそのもの。こんな人が犯罪対策の総責任者なのだ。

こんな政権に反対している小説家の自宅は、庭付き一戸建と立派で、室内も上品な感じだ。広い部屋には書棚が整列していて本がたくさん並んでいる。彼が仕事に専念できるように、妻は身の回りのことをすべてこなしていたとも言う。
これに対して、加害者は「団地の不良」である。富裕そうな家に押し入る一方で、自分たちより下層にいるホームレスに暴行して面白がる。公営の集合住宅に両親と住んでいて、その地域はゴミが散乱しているし、建物の中も共有部分は散らかって落書きもあり、エレベーター故障も放置されている。家賃は安そうだが、それでも夫妻は共稼ぎで、不真面目な息子を心配していたら遂に事件を起こして刑務所に入れられるけれど、すると息子の部屋を間貸しして家賃を取っている。室内は整頓されているが、調度品など上品とは言えず、書棚も無い。いかにも蒙昧そうな低所得者に見える。
おそらく、この両親のような人たちが、政府を短絡的に支持しているのだろう。その後の展開で両親が政府に従順な対応をしていることから明らかだ。
これは昔から今まで同じである。よく政府に苦しめられている人たちが、その蒙昧さから政府を支持し、むしろ政府の犠牲者にならずにいる人たちが、その才覚から政府を批判している。
これを解らない人がいるのを、よくTwitterで見かける。「こんな内閣なのに何故この高支持率なのか。庶民は馬鹿か」と言うけれど、何故かというと馬鹿だからなのだ。



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