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SFに現実が追い付いた政治と宗教

  • 執筆者の写真: 井上靜
    井上靜
  • 2021年10月22日
  • 読了時間: 2分

 前に、知り合いの大学教授が、手書きが減ったので字を忘れると言っていた。

 これは、こちらからパソコンより高い万年筆を持っているという話をしたのに対してのことだった。それで、手書きもなるべくしないと、ということになった。


 フィリップKディックのSF小説に、未来の社会で万年筆を使う人が出てきた。

 わざわざ手書きして、それも万年筆というのは知的なこととして描かれているのだが、『ユービック』か『パーマーエルドリッチの三つの聖痕』か、どちらかのはずだが、記憶が不確かだ。それで読み直そうと思っている。

 

 また選挙があるから、それで宗教団体が騒いでいる。

 政治に宗教団体が関わると危ないというのは、田中芳樹の『銀河英雄伝説』が日本では有名だが、もともとロバートAハインラインが宗教を批判的に描いていたもので、ヒューゴ賞の『異星の客』でも、未来史の『動乱2100』でも、政治に宗教が関わると危ないという発想であった。そして昔から日本では、読むと創価学会あたりを連想すると言われていたものだ。


 フィリップKディックの小説でも宗教が重要な素材として出てくる。

 そして、いつも宗教団体のしていることは如何わしいのだが、その神とか教祖とかが、熱心な信者ではなく批判的だったり敵対的だったりの人の前に現れ、信者に対してよりも親切にしてくれる。どうやら宗教を信じると宗教的に真理と無縁になり、否定する者にこそ宗教的な真理はむしろ解るということのようである。そういう図式が繰り返し出てくる。

 『ブレードランナー』として映画化されたさいには省かれているが、原作の『アンドロイドは電気羊の夢を見るか』でも、宗教団体が熱狂的な信者を獲得している神秘体験はまったくのイカサマであることが暴露され、その後に無縁だった主人公が無意識のうちに奇妙にも同じ神秘体験をする。


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 そういうことを、選挙で宗教団体が騒いでいるのを見ると思い出す。

 ところで、ディックはSF以外の小説も色々と書いているが、邦訳で『小さな場所で大騒ぎ』という直訳に近い題名がスラップスティックコメディーのような印象である小説は、その題名の印象とはまったく違い、中上健次の小説を思わせる内容である。他の邦題に出来なかったのかと疑問であった。

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