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​炬火 Die Fackel 

 南京大虐殺の映画が世界的に話題となっている。

 これを観て衝撃を受けたという人がいる一方で、描写が甘いと言う人もいる。残酷な描写は抑制し、史的な事実の調査に基づいたものにしているからだろう。

 ところが、産経新聞紙上に、この映画は日本を貶めるための宣伝であり、南京虐殺が無かったことは研究で明らかになっていると、櫻井よしこが書いた。その研究とは何か。誰によるのか。まったく根拠が挙げられていない。櫻井よしこは他の記事でも問題を起こしていて、薬害では裁判沙汰となり、あの有名な弘中弁護士にとっちめられ、記事は根拠薄弱どころか捏造だと言われるなど、もともとその程度の「ジャーナリスト」である。

 この南京大虐殺について。日本の政府は、詳細には所説あるけれど、事件そのものの存在は明らかであると国会の答弁で認めている。


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 南京大虐殺を全否定する風説は、昔、一部で流行った。

 その中心は文藝春秋社の発行雑誌とそれに基づいた単行本である。その後、文藝春秋社は不利になってきたら「知らん顔」しているというべき状態である。全否定したわけではなかったと弁解できる余地を最初から残していたからだろう。

 昔は、これら否定論を受け売りする政治家がいた。そのため中国政府は、戦争のことで日本に怒る国民に、悪いのは当時の日本の権力者であるから日本人全体を憎んではいけないとなだめてきたけれど、対応を変えて、南京大虐殺など日本軍の蛮行の周知に積極的となった。だから、日本人の中には「中国や韓国は昔のことを何時までも言っている」と、お門違いの非難をする者がいるけれど、文句を言うなら自分の国の政治家に対して先ず言うべきである。


 学生の時に、中国人と韓国人の留学生と一緒にバイトしていた。

 その時、勤め先の社長が、やはり「過去のことを言わないで前向きになって仲良くすべきなのに。だから韓国は駄目なんだ」と、と軽々しく言ったら、韓国人の留学生はちょっと気色ばんで「僕もそう思って日本に来ました。なのに、日本に来たら、韓国で年配の人がよく言っていた戦争の時の話とまったく同じように韓国人を悪く言う日本人ばかりでした。仲良くする気が無いのは日本人の方でしょう」と言った。

 このやり取りを見ていて、自分の国の政治家が原因を作っているのに、それを批判しないで外国の悪口を言うのはみっともないと思った。それと同時に、こういう日本人は多いなとも思った。


 社長は、中国人の留学生には共産党の悪口を言っていた。

 当時、中国が経済に力を入れて発展が加速していることについて、それでも共産党が政権に就いている限りは経済的発展に限界があると説いていた。これは、よく言う人がいたけれど、その安易な受け売りだった。

 このとき、その中国人の留学生は大人しい人だったから反論するのではなく、いずれ結果は判るから、その時に同じことをもう一度言えるかどうかだ、と言っただけだった。

 そして今その結果が判っている。中国が日本を追い越しただけでなく、日本が衰弱して再起不能と言っておいたほうがいいくらいだ。その後、雑誌の仕事をするようになったさい縁あって週刊文春の記者をしている同世代の人に質問をした。ナチスの虐殺を否定する記事で文藝春秋社は雑誌をユダヤ系資本の圧力で潰され、その張本人である花田という編集長は追われるように退社したが、そんなふうに中国が経済力をつけてユダヤ系と同じように出来るほどになっても、前と同じように「南京大虐殺は無かった」なんて出来るかと。

 「できるわけないでしょう」という返事だった。   

 
 
 

 福井の中三女子殺害事件で再審無罪。

 この判決で、無実の罪を着せられて人生が滅茶苦茶になった人(60歳)に対し、裁判長が異例の謝罪をした。また、その前の再審決定では、裁判長が検察について、裁判で事実に反することを「ぬけぬけと」言い続けたと、厳しい言葉で非難した。

 これは、その人が逮捕されてから36年後に明らかとなった事実のことだ。この事件に物的証拠は無く、目撃証言だけだった。その目撃証言とは事件のあった日のことだった、ということになっていたが、実は別の日のことであった。これが途中で判明したのに、これを検察は隠し続けることで有罪にもって行ったのだ。


 まさに、「ぬけぬけ」と言い続けた検察。

 ところが、これに対して検察は悪びれていない。このようなひどい不正を行ったにもかかわらず、その検証をする気もないと、さらに重ねて「ぬけぬけ」と言っていた。

 あの袴田事件の時も、そうだった。証拠の捏造で有罪にしたのだから間違いではなく故意の不正をやらしたのだ。これには警察でさえ、相当の地位の警官が袴田氏を訪ねて謝罪していたのに、検察は謝罪しないだけでなく、不満だけど我慢しておいてやるという意味のことを言い、事実上、ほんとうは有罪なのだと言う名誉毀損ものの発言まで吐いていた。


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 そもそも日本の刑事訴訟法が悪いのだ。

 あれは検察の権限が強すぎるどころか無限大にしている。だから検察に居ると自分たちが日本の正義と秩序を守っていると勘違いしてしまう。それどころか、自分たちは神だと錯覚している。だから人の生殺与奪を握っているのだと得意がっている始末である。

 これは、前に自分が大学の法学部で履修した元検察官の教授の狂信的な言動について述べたとおりである。まず検察官が裁判の結果を決めて誘導していて、検察官に操られて裁判官は判決すると言っていた。それを妨害する陪審員制度には反対で、全人類の中で最も頭がいいのは検察官だから、それ以外は低学歴はもちろん高学歴でも理科系その他は頭が悪いから裁判に口出しするべきではないと言っていた。

 

 だから検察官は平気で不正をやらかす。

 そしてバレても全く反省しない。まったく、頭のおかしい人のたまり場になっているのが検察庁である。これは先に指摘したとおり、日本の刑事訴訟法が検察に対して異常な権力を与えているせいだ。そんな場にいつも身を置いていたら、劣情を来してうえ、それが当たり前だと思い込み、自分で気づかないまま異常な行動をとる。

 これを正常にするためには、刑事訴訟法を全面的に作り直すしかない。日本の刑事訴訟法は狂っているのだから。

 
 
 
  • 執筆者の写真: 井上靜
    井上靜
  • 8月18日
  • 読了時間: 3分

 「富田メモ」という日経新聞のスクープがあった。

 これは富田宮内庁長官が、昭和天皇の発言を書き留めておいたもので、ここに、今後は靖国神社を参拝しないと言っていたことが書かれていた。なぜなら靖国神社がA級戦犯を合祀したのが不愉快だからであるというのだった。

 その記述は、昭和天皇が靖国神社の関係者の名を挙げて批判しているなど具体的だったし、ちょうどそこから実際に昭和天皇は靖国神社を参拝しなくなったから、この信憑性は確かだという評価が固まっている。


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 靖国神社にこだわる人たちにとって「富田メモ」は衝撃的だった。

 「靖国神社に反対する者は日本人じゃない」と興奮して言っていたけれど、それなのに昭和天皇は、特に批判されているA級戦犯合祀が不愉快で参拝をしなくなったというのでは、非常に困る。

 それでなんとか否定しようとしたが、無理だった。しかし「ネトウヨ」は否定した。「朝日新聞の捏造だ」と。日経新聞のスクープなのに。ネトウヨが何か言うのは、こうした滑稽な雛型にあてはめて言うから、誰が何を言っても同じになるし、事実でなくても構わない。だから「ウヨ」は右翼ではないと言われるわけだ。


 そうしたネトウヨの滑稽なパターンをもう一つ紹介する。

 ネトウヨは誰が何を言っても金太郎であるが、そこでよく見かける一つに田中角栄首相が残した言葉にケチをつけて得意がっているのがある。田中角栄首相は言った。「戦争を知っている者が政治の中枢に居るうちはいいが、居なくなったら危険だ」と。この警告が、今ちょうど当て嵌まると言われているけれど、これにネトウヨは「ヒットラーは戦争で活躍して負傷したから勲章を貰っている。この事実だけでも田中角栄の言うことは間違いで、そんな言葉をありがたがるのはバカだ」


 田中角栄は、庶民として軍隊に狩り出されたので虐待された経験を持っている。

 だが、田中角栄もと首相の後ろ盾で首相になった中曾根康弘は、東大を出て内務省に勤務するなどエリートコースを進んでいるなかで海軍士官になったから酷い扱いを受けた経験がない。だから田中角栄は、中曾根が土下座して頼んだとも言われているが、そのさい側近に説得もされたので、後から考えを変えたけれど、最初のころは中曾根を嫌っていた。

 そして首相になったあと、中曾根はエリートだったから苦労が解らない、戦争についての考えも軽いのだと、よく庶民から言われていた。


 中曾根と同様に、ヒットラーはどうなのか問題になる。

 ヒットラーが戦争で勲章を受けたことは事実でも、それは「戦争を知っている」ことになるのか。他の人たちのことも、そういう問題がある。そもそも、戦争に行った体験と、その体験によって得た認識は、人それぞれである。この当たり前のことを語らず、ただ漠然とした事実を挙げて、事実だけで反駁できると得意がっているのはみっともない。ただトリビアを提示しただけ。大したことないのに知っていることをひけらかして得意がっているのは無様だ。

 これはビートたけしが「なら~は何だっての」と言って真面目な話を茶化して面白いと錯覚させているのと同じである。たけしの場合はギャグだし、ギャグにしても初期に比べて質が低下していた。

 この質低下したビートたけしのギャグと同じことを、政治の話でやらかして自己満足しているのがネトウヨである。 

 
 
 
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