top of page

​炬火 Die Fackel 

  • 執筆者の写真: 井上靜
    井上靜
  • 2022年4月19日
  • 読了時間: 2分

 公民館に新聞を読むため毎日のように来る人がいる。

 この人は見るからに相当高齢の男性で、隠居の身らしい。そして、いつもマスクを付けていない。それで目立つが「文句あるか」という顔を常にして見せる。孤独な老人が注目されたがっているようにも見える。公民館の職員が言うには、マスクの強制に反対だから信念で付けないそうだ。だから注意されても聞かない。しかし黙々と下を向いて新聞を読むだけだから、マスクは必要ではない。それで出入り禁止ではないとのこと。

 それなら結構だろう。


 ところが、マスクをずらして鼻をかいていただけで𠮟つける女性の職員がいた。

 それも、指差してヒステリックにどやす。信念でマスクを付けない人が、喋ったりしないから許容されているのに。マスクをしないで喋っていたならともかく。

 これについて、その上司に訊いてみたら、たまたま何かのきっかけで神経質になっていたらしいと言う。そして、他の健康上の事情からマスクを付けられない人だっているのだから、ちょっとずらして直ぐに戻し喋ったりしていないし混雑するなかでのことでもなかったのをキツイ調子で咎めるのは不適切であると認めた。



 だいたい政府の無策や失政を問題にせずマスクで些細な難癖とは滑稽である。

 かつて戦争でも、軍が滅茶苦茶な作戦で敗北の連続なことを問題にせず、国民に対して非常時だから忍従しろと無関係なことまで咎めていたのだから、その元々からの体質が日本は改まっておらず、その反映の一つということだろう。


 
 
 
  • 執筆者の写真: 井上靜
    井上靜
  • 2022年1月5日
  • 読了時間: 2分

 正月の餅が余ってしまったという人は毎年のようにいる。

 正月じゃなくても、汁粉などいつでも食べればいいのだが、開封してから長く経ち過ぎるとカビが生えることがあるので、去年に買っておいた餅は消費しないといけないということだ。それで前に林家彦六の名言について述べたことがある。


 新年の大喜利で弟子から「どうして餅にカビが生えるのですか」と問われて林家彦六は「早く食わねえからだ」と言って大うけだった。

 けれど、カビが生えることは、他の食品でも食品以外のものでも普通にあって、それは困ることだ。なのに、わざわざ餅というのだから、胞子が付いて養分を吸収してというのではなく、日持ちするとはいえ保存食ではない餅なので「早く食わねえからだ」が正解である。


 それで揚げ餅にする人もいる。

 かつて近所の同級生の家へ何かの用で迎えに行った時、その同級生は揚げ餅を食いながら出てきた。それが美味そうに食っているので、そのことを一緒にいた同級生たちが言ったら、それならと彼のお母さんが追加で作って振舞ってくれた。礼を言って食べたが、余った餅を早く消費したくて揚げ餅にしたそうで、在庫処分できて良かったとのこと。


 

 もともと子供に餅をやったのがお年玉だった。

 それがなぜか現金になったわけだ。前に菓子の詰め合わせを何箱も貰ったので、お裾分けみたいにして何人かに渡したのだが、小さい息子がいる人に歯は生えているかと問うたら煎餅をバリバリ食べているというので、それならと一箱を坊ちゃんにと渡した。

 そのあと、もう少し大きくなったのでお年玉かと知人に言ったら、その奥さんから「お年玉は気にしないでください」と言われた。もちろん遠慮してのことだが、まだ小さいので現金は使えないということと、それなのに千円くらい渡したら、おそらく父親が自分のたばこ代か何かにしてしまうだろう。それも念頭にあってのことだったはずだ。


 とにかく餅は早く食ってしまうことだ。

 
 
 
  • 執筆者の写真: 井上靜
    井上靜
  • 2021年12月4日
  • 読了時間: 2分

 オートバイで転倒し怪我で手術した男性の話を聴いた。

 この人は普通の真面目な感じのおじさんという人で、ヤバイ暴走するタイプではなかった。ただ、事故を起こした時は急いでいて、ついスピードを出してしまい、そのうえ焦っていたので転倒してしまったそうだ。



 それで気絶し、気が付いたら病院だった。

 オートバイが転倒したのを目撃した誰かが通報してくれて、救急車で運ばれたという次第だった。不幸中の幸いで、命は助かり、怪我で手術しなければならなかったが後遺症なく回復した。ただ、あの時なぜ急いで焦っていたか、思い出せないと言う。何かで急いで焦っていたことは明確に記憶しているが、その訳が転倒で気絶したと同時に頭の中から記憶が消えてしまった。


 それで最初は、何か困ったことになるだろうと彼は心配したそうだ。

 しかし、どうしても思い出せない。それで、仕方ない、いずれ困ったことになったら、その時に思い出せるだろうと覚悟した。ところが、そのままいつまでたっても何も起こらない。ということは、完全に忘れてしまっても問題ないことだったわけだ。

 つまり、そんなどうでもいいことでオートバイを飛ばして事故って怪我したということだ。しかし、その時は急がないといけないような気がしていたのだろう。


 それで教訓。

 彼は言った。まず普段から余裕を持つようにすること。そして、その時は焦っているから凄く重大なことだと思っているだけで、後で冷静になって考えると大したことないどころか忘れてしまってもいいことがあり、少なくとも命がけの価値があるなんてもの、この世にそうあるわけがない、ということを肝に銘じておけば長生きできるはずだ。



 
 
 
  • twitter

©2020 by 井上靜。Wix.com で作成されました。

bottom of page