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​炬火 Die Fackel 

  • 執筆者の写真: 井上靜
    井上靜
  • 2022年1月5日
  • 読了時間: 2分

 正月の餅が余ってしまったという人は毎年のようにいる。

 正月じゃなくても、汁粉などいつでも食べればいいのだが、開封してから長く経ち過ぎるとカビが生えることがあるので、去年に買っておいた餅は消費しないといけないということだ。それで前に林家彦六の名言について述べたことがある。


 新年の大喜利で弟子から「どうして餅にカビが生えるのですか」と問われて林家彦六は「早く食わねえからだ」と言って大うけだった。

 けれど、カビが生えることは、他の食品でも食品以外のものでも普通にあって、それは困ることだ。なのに、わざわざ餅というのだから、胞子が付いて養分を吸収してというのではなく、日持ちするとはいえ保存食ではない餅なので「早く食わねえからだ」が正解である。


 それで揚げ餅にする人もいる。

 かつて近所の同級生の家へ何かの用で迎えに行った時、その同級生は揚げ餅を食いながら出てきた。それが美味そうに食っているので、そのことを一緒にいた同級生たちが言ったら、それならと彼のお母さんが追加で作って振舞ってくれた。礼を言って食べたが、余った餅を早く消費したくて揚げ餅にしたそうで、在庫処分できて良かったとのこと。


 

 もともと子供に餅をやったのがお年玉だった。

 それがなぜか現金になったわけだ。前に菓子の詰め合わせを何箱も貰ったので、お裾分けみたいにして何人かに渡したのだが、小さい息子がいる人に歯は生えているかと問うたら煎餅をバリバリ食べているというので、それならと一箱を坊ちゃんにと渡した。

 そのあと、もう少し大きくなったのでお年玉かと知人に言ったら、その奥さんから「お年玉は気にしないでください」と言われた。もちろん遠慮してのことだが、まだ小さいので現金は使えないということと、それなのに千円くらい渡したら、おそらく父親が自分のたばこ代か何かにしてしまうだろう。それも念頭にあってのことだったはずだ。


 とにかく餅は早く食ってしまうことだ。

 
 
 
  • 執筆者の写真: 井上靜
    井上靜
  • 2021年12月4日
  • 読了時間: 2分

 オートバイで転倒し怪我で手術した男性の話を聴いた。

 この人は普通の真面目な感じのおじさんという人で、ヤバイ暴走するタイプではなかった。ただ、事故を起こした時は急いでいて、ついスピードを出してしまい、そのうえ焦っていたので転倒してしまったそうだ。



 それで気絶し、気が付いたら病院だった。

 オートバイが転倒したのを目撃した誰かが通報してくれて、救急車で運ばれたという次第だった。不幸中の幸いで、命は助かり、怪我で手術しなければならなかったが後遺症なく回復した。ただ、あの時なぜ急いで焦っていたか、思い出せないと言う。何かで急いで焦っていたことは明確に記憶しているが、その訳が転倒で気絶したと同時に頭の中から記憶が消えてしまった。


 それで最初は、何か困ったことになるだろうと彼は心配したそうだ。

 しかし、どうしても思い出せない。それで、仕方ない、いずれ困ったことになったら、その時に思い出せるだろうと覚悟した。ところが、そのままいつまでたっても何も起こらない。ということは、完全に忘れてしまっても問題ないことだったわけだ。

 つまり、そんなどうでもいいことでオートバイを飛ばして事故って怪我したということだ。しかし、その時は急がないといけないような気がしていたのだろう。


 それで教訓。

 彼は言った。まず普段から余裕を持つようにすること。そして、その時は焦っているから凄く重大なことだと思っているだけで、後で冷静になって考えると大したことないどころか忘れてしまってもいいことがあり、少なくとも命がけの価値があるなんてもの、この世にそうあるわけがない、ということを肝に銘じておけば長生きできるはずだ。



 
 
 
  • 執筆者の写真: 井上靜
    井上靜
  • 2021年12月2日
  • 読了時間: 2分

 近所の開業医に心電図をとって診てもらった。

 まったく異常なしということだった。なんでこんなことをしたかというと、前に不整脈が酷くて心電図にも表れていたからだった。あの時は本気で、もうじき死ぬのか、すると悦ぶというより安堵する奴らが何人かいるなあと思った。

 ところが、最近は何度も心電図をとって、まったく異常なしである。



 これについて、その開業医は言った。

 そういうのは、よく、ストレスが原因になっている。それは確かにあった。ひどかった。その環境が変わったから、不整脈も起きない。また、あの時は、あのひどい状態でよく生きていたものだと不思議なくらいだったから、今なんか絶対に大丈夫だ。


 この開業医は、かなりの高齢だが仕事はしっかりしていて長いこと医師をやってきた人だ。

 その息子が診療所で色々な機器を扱っている。それよりもっと年下の若い医師が近所で心臓を専門にした診療所をやっている。この人に、前のひどい状態の時、カテーテルで治せると言われた。その小さい診療所ではできないから、大きな病院で専門医が実施すればリスクは極めて少ないと言う。


 この話を、高齢の開業医に話した。

 そうしたら、カテーテルは必要なくて話が大げさだと指摘された。そして、その近所の若い開業医が、自分の診療所ではできないから大きな病院でと言うさい、紹介状を書こうかと言い、さらに文章料金は何千円と言うので要らないと断ったことを伝えたら、高齢の開業医は笑っていた。

 あれは開業したばかりだったからだろう。それで、若い開業医は、紹介状でもなんでも稼ごうということだったはずだ。それが丸判りだから、既に長くやっている開業医は思わず笑ってしまったのだろう。


 とにかく、もう心臓は平気になり、まさに「憎まれっ子世に憚る」である。


 
 
 
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