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​炬火 Die Fackel 

  • 執筆者の写真: 井上靜
    井上靜
  • 6月15日
  • 読了時間: 3分

更新日:6月15日

 昔の人気アニメの声優らによるヘイト発言が相次いだ。

 それで、出演した作品まで外国での評判が墜ちてしまうと騒ぐ人達がいる。けれど、日本のアニメなんてとっくに「オワコン」のはずだ。

 これについては、すでに他で様々な指摘があるので、これ以上の言及は無用だろう。


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 昔の人気アニメとは『新世紀エヴァンゲリオン』である。

 それで、あんな発言をするのが『新世紀エヴァンゲリオン』に関与した人の新世紀の姿と言われた。

 具体的にいうと、庵野秀明は、脚本で政府批判のデモを茶化し、貞本義行は韓国慰安婦像を「汚い」と罵り、大塚明夫は百田尚樹を熱烈に愛読し、緒方恵美は兵庫県知事の再選を祝し、ついに林原めぐみが外国人を生態系を乱す外来種に喩えたSNS投稿で「炎上」した。

 これは最近の渡世ということでもある。


 もっと前から関係者の同様な発言はあった。

 例えば主題歌の作詞者である及川眠子は、自分が右寄りだと表明し、これが信念の右派とは言い難く、社会の弱者を見下し悦に入るネトウヨそのものだった。

 そんな人柄が嫌になったのか、さんざんノロケていた十八歳年下の夫から言い出されて彼女は離婚し、それは私生活だから他人がとやかく言うものではないが、しかし彼女は、タレントの磯野貴理子が二十歳以上年下の夫から子供が出来なかったからと言われて離婚したという話題に勝手な口出しをして、当人たちが仕方ないと納得して合意したというのに、そんな離婚の理由は嘘に決まっていると決めつける発言をSNSと投稿する始末。

 

 これは作品がそういう内容だから、製作に集まる人もそうなると言われている。

 はたしてどうかは、さまざまな見方ができる。声優がアニメで演じた役に影響されることもあるかもしれない。

 それについて、前に書いた脚本の一部を抜粋して引用する。パロディとして書いたものである。もとは『宇宙戦艦ヤマト2』の第一話の、古代が土方に呼び出された場面である。以下、参考まで。


土方「なぜヤマトはアンドロメダに航路を譲らなかったのか」

古代「優先航行権は、わが艦にありました。また、随行する輸送艦が損傷していたので、急いで帰還する必要がありました」

土方「新しく就任したアンドロメダは地協防衛軍の宇宙艦隊の旗艦だ。最優先権がある」

古代「お言葉ですが、損傷した艦が急いで帰還しなければならないのは人命に関わるからです。にも拘らず旗艦が優先というのでは、軍国主義の発想と言わざるを得ません」

土方「富山君、出演している番組を間違えているんじゃないか。これは『宇宙戦艦ヤマト』だ。『銀河英雄伝説』じゃない。いま君が演じているは古代進だ。ヤンウェンリーじゃない」

古代「木村さん、役に感情移入しすぎて役から離れないでください」

土方「セリフを間違えたのは君だ。ほんとうは、『損傷した艦があったからです』『それをなぜあの時に言わん』そこで古代が黙り、土方は『頑固な男だな』と言って笑みを浮かべ、沖田の影響だろうという顔をするんだ」

演出家「カット。収録やり直し」

  

 
 
 
  • 執筆者の写真: 井上靜
    井上靜
  • 5月25日
  • 読了時間: 2分

 昔から言われているとおり「食い物の恨み」は強い。

 これが革命で政府が転覆する原因にもなる。ブレヒトの代表作『三文オペラ』でも「清く正しく生きろったって、おまんま食えなきゃ聞く耳持たねえ。人の道を得より前に先ず飯だ」と謳われている。 これほど切実な問題は他にないだろう。


 マリーアントワネットの「パンがなければケーキを食べればいいでしょう」は、フランス革命で象徴的に言われたことで、実際には、少女漫画や宝塚歌劇のネタになったような何も知らないお嬢様だったから「悲劇の王妃」となったのではなく、政治的な役割を相当に担っていたことが、後から解ってきたと言われている。

 だけど、食い物の恨みで大衆がブチキレたという図式は解かり易い。


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 『戦艦ポチョムキン』では食料庫の肉にウジが湧いていたことで、その酷い待遇に兵士たちが怒って叛乱を起こすけれど、実際にロシア革命だって元は食い物の恨みである。

 万博でも虫が湧いているけれど、これは虫を食べる魚や鳥を万博のために蹴散らすようにしてしまったから大量発生したと指摘されているから、環境破壊で虫が湧いているという図式は『風の谷のナウシカ』と同じである。それはともかく、国民の生活状態が悪いのに何が万博なのだろうか。


 日本の民主化運動の原点は米騒動である。

 日本では農民一揆はあっても農民革命は無かった。生産者より消費者の立場からの運動が権利意識を高めたからだ。しかも、これは女性とくに主婦が中心だった。

 農水大臣のトンデモ発言により、おそらく今頃、自由国民社では今年の流行語大賞に「米を買ったことがない」「米は売るほどある」を有力候補にしていることだろうし、清水寺では今年の漢字で「米」と書くつもりではないだろうか。

 とにかく前向きに考えるなら、日本は再び民主化運動を盛り上げることができそうである。

 
 
 

更新日:4月22日

 前に、こんな話をした。

 かつて同級生が西武新宿線に乗っていた時。『機動戦士ガンダム』などアニメーション映画のキャラクターデザインで知られ、漫画家としても活躍してきた安彦良和氏を偶然に見かけて、頼んでサインしてもらった。

 そういう話だった。


 そして、こんな話にもなった。

 その安彦良和氏が、『ガンダム』に出てくる「ニュータイプ」を支持しないと発言していた。また、これよりずっと前に、『ガンダム』の製作者である富野由悠季氏も、テレビに出たさい「ニュータイプ」という設定を入れたことは間違いだったと発言していた。

 ようするに富野氏の発言とは、人間が次第に進歩することについて「ニュータイプ」という概念を作る必要はなかったという趣旨だったし、安彦氏は「選民思想」に繋がるものだと指摘していた。

 ということで、『ガンダム』を作った中心の二人が「ニュータイプ」なるミュータントというか新人類というかの設定を否定したのだ。

 ところが、「ファン」「マニア」「オタク」の人たちは、「ニュータイプ」が出てくるからこそ面白いので、これがないと作品は意味をなさないと言う。

  しかし、そもそも『ガンダム』は『スターウォーズ』のような神話伝説調ではないのだから、神秘主義とかオカルトとかに属する設定を持ち込んでしまうと、多くの人は違和感を覚える。

 また、過去のSFアニメのように、宇宙人が侵略してくるとか、マッドサイエンティストや秘密結社による世界征服の陰謀とか、そんな非現実的な敵と戦う話ではなく、今の現実で起きている戦争と同じことが未来に起きたら、どんな科学技術を用いたものになり、どんな政治経済の背景になるか、という追及をする話なのが『ガンダム』であり、それこそ面白さだったはずだ。だから放送当時は、過去のSFアニメと違って大人でも面白いと感じると評価されていたのだ。

 ところが、後から映画化などで人気が出て熱狂的なファンやオタクが発生すると、その人たちは娯楽作品を鑑賞するというより宗教のように扱っている。こういう人たちが主流になると、そうではない多くの人たちは離れるのだ。


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 これに対して、別の指摘があったのだ。

 それは、結局『ガンダム』は子供むけにオチを付けたということだ。描かれているのは戦争なのだから、このオチは政治的であるはずだ。しかし、それでは子供には解らないし、子供でなくてもアニメばっかりのマニアやオタクといわれる人たちの頭の中に入っている脳の思考力では理解できない。

 それでオカルトを持ち込んで落した。そういうことをしないSFアニメ『銀河英雄伝説』は、原作の小説のとおり戦争に政治的オチをつけていたけれど、これがアニメのマニアやオタクは理解できていないのが現実だ。

 なるほど。それでニュータイプを否定されると熱狂的な人はヒステリーなのだろう。ただ、それを作者が意識していたというより、そもそも作者の側がオチを思いつけなかったのではないだうろかとも考えられる。

 

 
 
 
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