- 井上靜

- 2024年9月29日
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袴田事件で再審無罪の判決が言い渡された。
事件の詳細は調べれば誰でも簡単に知ることができるので、ここで改めて説明する必要はない。また、有罪判決に反対した裁判官の苦悩を描いた映画と、被疑者を追ったドキュメンタリー映画が作られているので、これを見た人もいるだろう。
被告人はボクサーだった。これでアメリカで実際にあった事件を基にした映画『ハリケーン』を思い出す人もいるはずだ。あれは事件を知ったカナダ人がアメリカに来て調査し、妨害を受けながらも証拠を発見してゆくという内容だった。

もとプロボクサーの輪島氏が袴田事件の支援者を訪ねてきたそうだ。
その活動をしている人から話を聞いた。ボクサーだから暴力的で犯人に違いないという偏見が、この事件にあったと指摘されている。これに輪島氏は怒っていたそうだ。
それで「差し入れに団子もって来たりして」と冗談のつもりで言ったら「本当に持って来てご馳走になった」とのこと。輪島氏がボクサーを引退してから団子屋の経営を始めたことは有名である。『だんご三兄弟』という歌が大ヒットした影響でよく売れたから、歌を作った人に感謝していると言っていた。それはともかく、証拠を無視して偏見で死刑判決とは無茶苦茶であるが、そのような事件は沢山ある。
「拷問王」と呼ばれた紅林麻男刑事の影響も指摘されている。
数々の事件を解決して「名刑事」と言われたが、実は適当に目星をつけたら証拠の捏造と拷問による自白で犯人に仕立て上げていた。
そして、このようなことが起きる取り調べの在り方への批判から慎重になるとともに、不起訴が増えている。証拠が無いから訴えを起こせない件が増加したということは、それまでいかに拷問で自白させてきたかということだ。しかも、その不自然な内容の自白だけによって、日本の刑事裁判は八割が有罪となっている。しばしば無罪の証拠があっても無視される。
國學院大法学部の白井駿教授(もと検察官)には怒りがおさまらない。
かつて聴講していたさい、前近代的な警察の取り調べの実態と、数々の冤罪の現実を無視し、日本で有罪率が高いのは証拠が乏しいと検察が不起訴にするからで、裁判官の不公正など存在せず、一般社会人の良識を取り入れる陪審員制度など反対で、なぜなら自分のように司法試験に受かった頭の良いエリートだけが裁判をするべきなのだと繰り返し言っては、学生たちから失笑を買っていた。
もちろん、検察官だった当時は権力に庇護されていたから、このような戯言を吐いても大丈夫だっただろうが、それに慣れきって大学でやらかしてしまった。連続強姦殺人事件で死刑になった小平義男と同じである。兵士として中国に行って強姦殺人をくり返し、この感覚を戦後に帰国してからも維持していたから同じことをしたと取り調べで言ったそうだ。これと酷似していた。
また、白井駿センセイの自画自賛は、アメリカのゲーリースペンス弁護士の言葉がピッタリである。シルクウッド事件などで活躍し名弁護士と言われたスペンス弁護士は、エリート意識まるだしの公然とした自画自賛を「社交場のオナニー」と言っていた。まさにそれである。
もちろん庶民にも庶民なりに無知と偏見がある。
その一方で「エリート」にも偏見はもちろん無知もある。それが徳島ラジオ商殺し事件や八海事件と同様に袴田事件も反映している。ここを忘れてはならない。


