- 井上靜

- 2020年10月21日
- 読了時間: 4分
更新日:2021年6月24日
あの池袋の交通事故を起こした人は、社会的地位の高い「上級国民」だから、司法が甘い対応をしていると非難する人たちがいる。
また、弁護の手法にも疑問が指摘されていて、これについて作家で政治家の田中康夫氏は、担当する弁護士についても明らかにするべきではないかとSNSで発信していた。
しかし、「上級国民」の弁護は良い商売になるから、どんなに問題があっても指摘と批判をしたら業務妨害だと弁護士会が文句を言うので、マスコミもやりにくい。逆に、「人権派弁護士」が、警察の捜査に不正があると追及するなど当たり前のことをしたら、マスコミから「犯罪者に味方した」と激しく叩かれる。弁護士会は権力を批判せず、せいぜい「声明」を形式的に出すだけだから、叩きたい放題である。
つまり、マスコミも情けないが、悪いのは弁護士会である。
こうした弁護士会の欺瞞と偽善は、挙げていたら際限がない。
その一つ。詳しいことはホームページの医療裁判関係のサイトおよび拙書『防衛医大…』を読んで欲しいが、この裁判で国と医師に雇われた弁護士は、正当な訴訟活動ではなく不正による妨害を図った。
これを後から問題にすると、東京弁護士会は逆に不正の告発を非難した。国の機関に勤務する医師は「社会的地位が高い」ので、それを庇うためには不正を働くことも含めて何をしても当たり前であり、だから、それを問題にすることは「業務妨害」だと叫ぶヒステリックな対応をしたのだ。
これは、具体的にはどういうことだったのか。
まず、医師に雇われた弁護士たちは、訴訟の途中で患者の訴えは不当だと明らかになったので、患者を逮捕しろと警察に告訴をした。
なぜ不当だと明らかになったのか。それは加害医師が自分でそう言ったから。この医師は日本一の権威者であるから、この医師が言えばそうなるというのが、医師に雇われた弁護士の言い分であった。本当に権威者でも、自分で自分の誤りを否定しただけである。また、その医師の年齢とキャリアからして、到底、権威者とは言えない。当時三十代前半で、教授でも准教授でもない講師であった。専門学会にも加盟していなかった。
これだけでも多くの医師たちが呆れたり失笑したり。さらに、学会の理事長などをしている東大医学部教授の専門的で客観的な指摘よりも、防衛医大講師が自分で自分のことを言っているほうが正しいというのが、被告に雇われた弁護士の言い分であった。
しかも、このあと防衛医大を卒業して勤務もしていた医師が法廷で証言し、これについて防衛医大で同僚だった医師たちも「こんな手術をしたら、裁判になって当然だ」と言ったので、堂々と証言したとのことだった。
ところが、この証言をした医師は、こんなことも言っていた。被告側の弁護士から、あらかじめ打ち合わせしようと持ち掛けられたが、専門的に公正な証言をしたいからと断ったけれど、そのさい、とても失礼なことをされたそうだ。だから、証言は客観的にしたが、しかし、病院に雇われた弁護士は「大嫌い」と明言していて、この文書もある。
つまり、証言する予定の医師に失礼をして不愉快にさせてしまい、これは不利になると心配した弁護士が、荒唐無稽なことを言って警察に不当逮捕を唆したとしか考えられない。「国策捜査」のようなことを求めて。実際、警察によると「自衛隊の機関だから政治的配慮を」と医師に雇われた弁護士たちは強調していた。
一方、患者側の弁護士からは、警察の介入は不当であると言われたそうだ。結局、警察は告訴状を受理はしたが不処置とした。また、その告訴状は法的にとんでもない間違いをしていた。弁護士が二人がかりで、それも一人は元高裁判事、一人は法学博士なのに、という御粗末であった。
ところが、これを問題にしたら、東京弁護士会は「業務妨害」と叫んだのだ。事実と法律では全く反論できないくせに。
このように、金になりそうな社会的地位の高い「上級国民」をかばうためには手段を選ばないのが当たり前の弁護士会なのである。
そして、国と病院は敗訴し、防衛医大講師は退職すると、保険制度で優遇されているからと在宅医療の商売を始めた。このような俄医師が続出して問題となったので、厚労省は保険制度を改めた。
この問題の象徴的な事件として、その元防衛医大講師の件はマスコミに騒がれた。専門知識の貧弱や暴言によって患者の死期を早め、これが著名な芸能人(大橋巨泉氏)だったので週刊誌からNHKまでが取り上げたのだった。
こんな医師だと知っていたら、大橋巨泉氏と家族は忌避したはずだ。後で知って驚いていたらしい。前からマスコミは、弁護士会からの攻撃を恐れて慎重にならざるを得ず、加害医師の実名は報道してこなかったのだ。
このため「巨泉さんを殺したのは医師よりむしろ弁護士と弁護士会」という非難の声も挙がっていたのだ。
